出版社内容情報
【全巻内容】1 灰色のノート/2 少年園/3 美しい季節1/4 美しい季節2/5 診察/6 ラ・ソレリーナ/7 父の死/8 一九一四年夏1/9 一九一四年夏2/10 一九一四年夏3/11 一九一四年夏4/12 エピローグ1/13 エピローグ2
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
71
父親の容態が悪く、失踪中のジャックを探すアントワーヌ。ジャックはスイスで文筆活動をしながら社会主義革命運動に加わっており、自らの失踪理由を本に著している。ジャックは、過去の権威主義に反発するこの時代の左翼化した知識階級の象徴として描かれているのだろう。2020/05/07
syaori
65
一通の手紙から失踪中のジャックの居所が判明。出奔に至るまでの彼の青春の煩悶の一端も示されます。再開した兄弟の互いへの親愛と反発、病気の父や妹同様に育ったジゼールを巡り愛憎半ばする思いを通して彼らの変化を示す作者の筆は大変見事。しかし、本当に三年ごしに合う互いの目を通すと彼らは何と大きく変化していることでしょう。嵐のような恋がアントワーヌの人間性に幅を持たせ、懊悩と不遜の青春期を脱したジャックは毅然とした若者に。そのジャックは、三年間の漂白や現在の生活についてまだまだ秘密が多そう。様々に想像しながら次巻へ。2021/02/08
榊原 香織
39
6巻目 作者は相当なネコ好きと見た。 ローザンヌのジャックの部屋へたまにやってくる堂々たるシャムネコの描写が秀逸2020/10/25
藤月はな(灯れ松明の火)
31
行方不明だったジャックが「ボーチー」という名で創作活動を続けていることが判明した巻。ジャックは大人になって気性は多少、落ち着いていたけど彼の作品である『ラ・ソレリーナ』やアントワーヌへの静かな反駁に彼の変わらない情熱や反骨精神が覗いているのに不思議なことに少し、ホッとします。一方、アントワーヌの相手をよく、理解することも共感することもしないで薄っぺらな善意を行動する偽善性につい、イラついてしまうんですよね。そしてジャックは自分を疎んじていた臨終の床につきつつある父に会いにいくが・・・。2015/09/22
ぞしま
21
ラ•ソレリーナ、イタリア語で妹。ジャックの自伝的私小説。それを読むアントワーヌ。その心の葛藤。死にゆく父、いなくなったジャック、ジャックを密かに探すジゼール。あいかわらずの息の詰まる心理描写。久々に出会ったジャックは男らしくなっていたが、根本は変わらないようにうつる。アントワーヌを抱きしめ誤解を解くシーン。あの生々しい裸形の告げ方がなんともジャックらしい。信頼出来る。ジャックは政治に向かうことが示唆されている。それが辛い。2014/11/23