内容説明
ギリシア神話きっての愛妻家として名高く、オペラや映画の作り手たちに霊感を与え続ける「竪琴弾き」。オルフェウスを創始者と仰ぐ、紀元前六世紀に発達した宗教に迫る!本書は、その背景にある伝説を読み解いた上で、唱道された教え(宇宙観、魂の不死性、秘教的な生活様式…)を明らかにしてゆく。
目次
第1章 オルフェウス―神話とオルフェウス精神の確立(伝説から神話へ;オルフェウスの伝説 ほか)
第2章 世界と支配権―オルフェウス教の反逆(ヘシオドスの宇宙誕生譚と体系の一般的特色;オルフェウス教の宇宙と神々の誕生譚、その伝達と多様性 ほか)
第3章 人類誕生譚と不死なる二つの対極―ふたりのディオニュソスとティタン族と人間(切り刻まれた神の神話;ディオニュソス教のディオニュソスとオルフェウス教のディオニュソス ほか)
第4章 日常生活と秘教世界(生活様式としての浄め;オルフェウスの秘儀)
第5章 死後の世界における記憶(冥界の分かれ道とオルフェウス教の道案内―金板;不死なるものが死すべきもの(ヘラクレイトス) ほか)
著者等紹介
脇本由佳[ワキモトユカ]
1965年広島県生まれ。1987年関西大学文学部仏蘭西文学科卒業。京都大学博士課程(西洋古典学専攻)修了。古代ギリシア文学専攻
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鳩羽
7
古代ギリシャの多数派の宗教と相反するような教義を持っていたオルフェウス教。その成り立ちと信仰のあり方をまとめた一冊。神はその不死性が神性の条件でもあった。人間は死ぬという点で神とは絶対的に異なる。しかし、オルフェウス教ではディオニュソスの神話より、人間は神性に由来を持ち誕生したとする。その不完全な神性は魂の不死として現れ、人間は望まぬ苦しい生を生まれ変わり繰り返さなければならない。輪廻しないための秘儀を伝えるのがこの教えだが、伝説、神話のオルフェウスからなぜこの教えが生まれたのかがよく分からなくて難しい。2019/12/09
愁
1
伝説と神話、両側面から迫る宗教としてのオルフェウス。宇宙観や、ディオニュソスとの関連辺りが個人的には興味深かったです。歴史に埋もれた信仰なんて数限りなくあるんでしょうね。
はるき
1
オルフェウス教について日本語で読める本。訳文の固さもさることながら、古代ギリシャの思想も歴史も門外漢の私には初見殺し。ザグレウスも驚く程度の惨殺っぷり。オルフェウス教の神話は『神統記』における神々の系譜と中身がだいぶ異なる為、まず「正統派」の系譜と神の中身を想像できるようにしておきたい。その上でエレウシス秘儀、ピタゴラス教団など秘教についての知識があれば、理解の取っ掛かりになりそうな印象。予習してリベンジ予定。2013/08/28
Tatsuhiko
0
プラトンの『ゴルギアス』を読んでいる際に「オルフェウス教」なる宗教(?)があったことを知った。何でも輪廻転生を唱え(東洋の専売特許では無かったのが驚き)、古代ギリシアの哲学者らにも大きな影響を与えたようだ。というわけでこの本を手にしてみたが、その実像は何とも掴みがたい。肉食をするな、ソラマメを食べるな、死んだら右の道を行け!それはともかく、この教えはポリスの基盤となっていた教義への「アンチ」で、大衆もとい被支配層への慰めだったとか。最後に示唆されるように、キリスト教などにも受け継がれた部分があるようだ。2016/05/11