出版社内容情報
大西洋の大いなる神秘を背に、ケルトの伝統にラテンの血が注ぎ込まれてきたアイルランド。本書は、イギリス諸島やヨーロッパ大陸からの侵入を受けながらも今日まで偉大なる文化を育んできた、その風土的特徴と歴史的事実を語る。不思議を発見する楽しみに満ちた、アイルランドを訪ねる者の基礎知識。
内容説明
本書はアイルランドの歴史を、おおむね古代、中世、近代、現代の四部に分けて叙述した通史である。いわゆる政治史中心の通史ではなく、広く民族史、宗教史、文化史、ひいては文化史・思想史にも及ぼうという、コンパクトながらアイルランドの全貌を浮き彫りにしようとする。
目次
第1章 ゲール人のアイルランド(起源;アイルランドのキリスト教化 ほか)
第2章 ノルマン人の侵入からイングランド人の征服完了まで(侵入;ゲール人の抵抗;テューダー家の征服)
第3章 征服完了から合同法まで(アルスター「植民」;キルケニー同盟 ほか)
第4章 独立とアイデンティティーの追求(オコンネルとカトリック解放;大飢饉 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
8
「アイルランドがたやすくキリスト教を信奉したことはしばしば驚嘆の的とされた。…たとえタラが呪われたり破壊されたり、またドルイド僧が姿を消したり彼らの宗教的職能を失ったりしたにせよ、教会はいくたび、しばしば巨石文明にさかのぼる異教の聖域に取って代わってきた…キリスト教による漸進的なアイルランド征服も、その社会の仕組み、吟遊詩人(バード)や法律関係の学校、また階層化された階級文化には手を触れずじまいだった」「キャッシェルの宗教会議(1101年)…の布告は、聖職者ないしは詩人を一般信徒の前に出すことを禁じた」2020/01/15
サアベドラ
3
クセジュのアイルランド通史。同じ題材を扱った中公新書『物語 アイルランドの歴史』にくらべて端折っている箇所が多く、また訳文もぎこちないのでわかりづらい。12世紀に侵入したノルマン人の影響を大きく取り上げているのは著者がフランス人だからか。それ以外これといった特色もないので、アイルランド史入門としては前掲の『物語~』をおすすめします。2010/04/02