出版社内容情報
合理主義的な観念論に叛旗を翻すように、二十世紀という危機の時代における人間の自覚の先鋭な表われとして登場し、主体的な自己を認識し、回復させるために起こった実存主義の思潮の流れを、サルトルとメルロ=ポンティの行動を中心にすえ、西欧思想の伝統に深く根ざす苦悩の意味を平易に解き明かす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しお
1
「なんであるか」に帰せられるものを本質と呼び、それに対して「……ある」に帰せられるものを実存と呼び、それぞれを優位に見る立場を本質主義、実存主義と称する。フランスでは保守的な位置の著者による本書では、主としてスコラ学を端緒とする本質主義の歴史を総括し、のちに近世台頭した実存主義の諸学説を解説する。本書は、本質主義の総括がやや雑なきらいがあり、実存主義が「一人一派」の立場であるかに見える。しかしフランス語圏の哲学者がêtreとexisterで何を言い分けているのかというこころは把握できることは確かだと思う。2019/12/16
みやったー
1
哲学者サルトルの有名なテーゼ「実存は本質に先立つ」のシンプルで力強く、蠱惑的でさえある響きに誘われて読んでみた一冊。前世紀に一世を風靡した実存主義の入門書。 神様が与えてくれた範疇(本質)を理想として自己の内省を続ける本質主義の哲学に対し、 実存主義では、人間は理由もなくこの世に生を受けるか弱い存在であるが、自己の存在の意味を選び取っていく=実存する存在であると考える。カッコいい...!2016/03/05
左手爆弾
0
実存主義が理論的に語れるのは、やはり「実存と本質の分離」だけなのだろう。本書では「本質は哲学史においてどのように考えてきたか」をやや広く、しかし少し雑に解説される。究極的には人の数だけ実存主義が存在してしまうことになる。最後の方で「実存主義という言葉を振り回して悦に入ってはいけない」的なことが書かれているが、しかし、それをしないと実存主義をやる意味も何もないようにも思う。2017/05/18