出版社内容情報
記号の時代にあって「言葉」はかつてなく「声」から遠ざかりつつある。本書は、この人類最大の発明が、古代ギリシャ、ヨーロッパ中世においていかに「声」と強く結びついていたかを検証し、また20世紀文学における「声」の意味を探りつつ、その力を現代に蘇らせようとする復権の試みである。
内容説明
本書では、私たちが忘れ去ろうとしている「声」の価値とはどんなものだったか(声の権力)、人間の古い言語感覚としての「声」がある国語形成のなかで社会的あるいは政治的にどのようなはたらきをしてきたか(声と国家、シャルルマーニュの言語政策、国語の誕生)、また現在の文学的発現としての「声」の意味(「失われた時」の声、ヴィエンヌ河の声)、最後に、「言葉は文字より声、声より心」と考えている筆者の、「声」というものとの関わり始め(故郷の声)のそれぞれについて語ってみたものである。
目次
1 声の権力
2 声と国家
3 シャルルマーニュの言語政策
4 国語の誕生
5 「失われた時」の声
6 ヴィエンヌ河の声―リモージュからみた島崎藤村
7 故郷の声―宮沢賢治のことばづかい