蹴り損の棘もうけ (新装復刊)

蹴り損の棘もうけ (新装復刊)

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  • サイズ 46判/ページ数 324p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784560047736
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

zirou1984

36
『神曲』煉獄編に登場する、天国の門が開くのをただ何をするでもなく待ち続ける怠け者ベラックヮの名を持つ男(解説によれば彼の性・ショアは人類最初のオナニスト・オナンの母から取られている)を中心に添えたベケット最初期の短編集。後の主要なテーマとなる「語ることそのものへの問い」はまだ見られず、本作では諧謔的引用や言葉遊び、性の悲哀といったものが師ジョイス直系の「いかにして語りうるか」な問いとして語られる。晦渋な表現が目につくものの、ベケットの作品が以後どのように簡素化され、切り詰められていくかを考えると灌漑深い。2014/06/05

袖崎いたる

6
ベケットを読むときに感じる違和感は、これは物語ではない何かなのだということだ、と思う。この感じは言い換えると、ある種の教養なり読書・思想のベースなりがないと楽しめないんじゃないかってことでもある。もっとこの人に入っていきたい。惜しまれるはこの本を、俺は速く読まなくてはならなかったこと。2021/01/11

井蛙

4
さて、かようにも不具の身体を抱え、数々の女を遍歴し(しかし最後に嗤うのはきまって女なのだが)、あてどもなく彷徨し続けた男の軌跡というのは、なによりも饒多な、しかし空虚な言葉によって埋め尽くされねばならなかった。怠惰の罪のために生前と同じだけの時間を煉獄の門の外で待たされているベラックワにとって、その〈二度目の生〉は彼の怠惰の内的な正当化のために費やされる他ないだろう。与えられた罰の不毛性を徹底的に舐め尽くすこと、それこそ神意に叶う贖罪というべきだ。進んで生を愚弄することによってのみ、生の愚劣さは癒される。2021/09/13

roughfractus02

3
饒舌で衒学的な言葉たちはまだ自身の存在に問いを向けないかに見えるが、雨に濡れた男、春の遠出、不自由な脚のような後に現われる諸イメージが、ひしめく言葉の流れの中で澱みのように現われる。これら澱みはまだダンテから引用された煉獄なる領域に席を譲っているが、中世に出現したこの領域は否定を重ねて成り立つ点で(天国でも地獄でもない)、宙吊りの場という作者馴染みの舞台となっている。すると、ベラックワの肖像(その内部や他者との葛藤の様)を埋める絵の具のようにカンバスを覆う言葉たちの中、背景は額の外を指すように見えてくる。2017/07/25

まどの一哉

1
ダンテ「神曲」やシェイクスピア(もちろん聖書も)その他古典からの引用やパロディ、ダブリン市内及び郊外の事細かな実際の様子などが絢爛豪華に散りばめられた饒舌体で、そのせいか観念的ではないのに難解で衒学的な体裁となっている。 主人公は世間的にはちゃんとした人間に見られているが、その実自分の時間を恋人より大切にするマイペースな男で、おそらく作者自身がモデルと思われるが、彼が2度の結婚を経て死に至るまでが自嘲的に描かれている。したがって全編ユーモラスではあるが微苦笑といったような味わいである。2019/06/25

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