出版社内容情報
時は1930年代、フランスの田舎町の映画館《マジック・パレス》……。その創立者や後を継いだ親子たちの生活が哀歓込めて描かれる。生の苦さと虚しさが胸に迫るフェミナ賞受賞作。
内容説明
1930年代、田舎町の映画館をめぐる人びとの哀歓。生の苦さとむなしさが胸に迫るフェミナ賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
刳森伸一
4
15年以上ぶりの再読。初読のときも良いと思ったが、今回はさらに心に沁みた。場末の映画館を舞台に様々な「敗北者」たちの群像が少年の頃の思い出として語られる。基本的に各自失敗続きの人生で夢も希望もない話なのだけど、完全に不幸でもなく、それどころかなぜか救いがあるような気がしてくる不思議な読後感がある。2018/09/13
ゆかっぴ
4
フランスの田舎町の寂れた映画館を手にいれた一家とそこにまつわる人々の毎日が淡々とした文章で綴られています。語り手である息子の孤独感やひそかな恋愛感情、一家の困窮していく様子などが淡々と浮かび上がりますが、それでもなんとか生活していく強さのようなものを人は持ち合わせているものなんだな、などと感じました。好きな作品です。2013/02/21
りつこ
4
子どもは多かれ少なかれ親の選択に振り回されるし、どんなに反発しても巻き込まれたり影響を受けたりしないではいられない。そしてまた、その後の人生を左右するような大きな選択をする時に、ちょっといい感じになっている恋愛とか、こういう選択をしたら親の胸が痛むに違いないとかいうような意地悪な気持ちとか、そんなところで決めてしまう、というのもよくあることだ。淡々とした物語で、こういうことをじわりと伝えてくるのって、ちょっとすごいと思う。これが文学ってやつなのかも!2010/04/14
salvia
3
30年代フランス田舎町のおんぼろ映画館を舞台とし、主人公は映画館の一人息子で、傾く一方の家業を任されるようになる高校生。映画好きでもないし、知らない映画ばかり出てくるのだけれど、「このころになると、フランソワは道を行くときにも、しばしば自分の影が路上に踊るのを眺めて興じたものだった。太陽は映写機であり、彼自身はフィルムだった」のような文章もあり、郷愁と映画愛に満ちた読むのが心地よいと思える小説だった。2023/11/14
hasegawa noboru
3
一九三〇年代のフランス、田舎町の川向うの場末にある映画館「マジック・パレス座」をめぐる人々の物語。登場人物たちに、スクーリーンに映し出されるような派手な波乱万丈の生涯、上を下への大騒動、劇的展開の人生があるわけではない。人生は些細な出来事の積み重ね、繰り返される日常の表層的なものの連続。そしていつの間にか時は過ぎて行く。〈人生は小説ではない。〉は、たまたま読み始めたばかりのローラン・ビネの新刊翻訳小説『言語の七番目の機能』の冒頭の一文だけど、このシネロマンという〈小説は人生のようだ。〉2020/10/11
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