出版社内容情報
トルストイをホメロスの叙事詩、ドストエフスキーをギリシア悲劇の系譜につながる作家と捉え、創作方法や宗教観、思想に根本的な分析を加える。
内容説明
本書は、芸術と思想の二つの面から巨大な二人のロシアの作家を総体的に評価したものである。あくまで、二人の作家を比較対照して考察している。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
46
原書は1959に出ていて、訳書が出たのもかなり古いのだが、2000/06に訳書の新装復刊版が出されたのも納得で、これは掘り出し物と、急いで脇に抱え込んだ。
ぴかぽん
3
「批評とは苦悩を経験したのちに明晰となった愛情である」著者の文学への愛を感じる良書。ドストエフスキー作品は圧倒的量感に反映する細部への忠実さ、劇的瞬間に向かって蓄積される個々の動作や思想をまるごと把握する巨視的な姿勢を持つ。戯曲を書くように小説を書いたことを草稿等から証明し演劇的性格に言及する。また魔術、恐怖、舞台などゴシック小説の伝統の影響、サディズムや少女陵辱など同時代の文学的傾向、不条理賛美と自然律の批判、哲学と文学の見事な融合など、作品への様々な視点を見せる。演劇性をもっと掘り下げてみたい。2018/10/31