出版社内容情報
海の上で生まれ、一度も船を降りることのなかった天才ピアニストの伝説。彼が弾くのは、いまだかつて存在せず、ひとたび彼がピアノから離れると、もうどこにも存在しない音楽だった……。
内容説明
海の上で生まれ、一度も船を降りることのなかった天才ピアニストの伝説。トルナトーレ監督により映画化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobi
89
海の上のピアニストそれも捨て子だったという、なわけない素性に才能。その素頓狂な空想の世界がいつしか生き生きとし始めノヴェチェントという名前にも愛着が生まれて、ピアノの対決では身を乗り出す船上の観客の一人になってる。その余韻冷めやらない内に…一種のコメディタッチからシリアスなモノローグへ。海の上、88のキーに限定されているからこそノヴェチェントは屈託なくピアノを弾くことができた。その境界線が外された世界に踏み出すことへのためらい。それこそ無数の想像力が羽を広げている世界に気づいて足が竦む作家もまた同じかも。2019/04/23
藤月はな(灯れ松明の火)
63
1900年、移民船のグランド・ピアノの上に置き去りにされた赤ちゃん。1900と名付けられた彼は音楽の神様に愛され、一度も地上に降りずに船上でピアノを弾き続け、人々を魅了した。やがて短くも濃密な旅をしてきた移民船は廃船になる事になったが・・・。一度は地上に降りて海を見ようとした1900が引き返したのは本当に未知の世界から来る怯えだったのだろうか。私は、あの場面は、現実に幻滅するよりも夢のままの方が美しいという事を彼は分かってしまったんだと思えてならない。少女への恋は映画オリジナルのものだったのですね。2022/08/31
コットン
62
船の中で存在感のある演奏をする(ジェリー・ロール・モートンと並ぶ)ピアニストのノヴェチェントは、観客を大海原のなかで踊らせることが出来る希有な技量の持ち主!戯曲的物語。2017/11/12
NAO
57
素晴らしい音楽の才能に恵まれながらも、無限に広がる世界に圧倒されて船上にとどまり続けたピアニスト・ダニー・ブードマンT・D・レモン・ノヴェチェントは、海の上から傍観者として世界を眺め、人生のすべてを音楽で表現した。彼の天才ぶり、そして、内に秘められた悲しみや苦しみが、一人称の一人芝居として、ときにユーモアを交えながら、シュールに淡々と繰り広げられる。不思議で、どこかノスタルジックで、哀調に満ちた調べにのせて。「道ひとつとったって、何百万もある。きみたち陸の人間は、どうやって正しい道を見分けられるんだい」2016/12/03
らん
23
無限ではないピアノの鍵盤で奏でるノヴェチェントの無限に広がる旋律。ワルツの調べ。夜の金色のリンクの上。大海原とともに踊るピアノのダンス。その音が連れていってくれるどこまでも広がる無限の旅。。。探しているものだけがそこにある場所で生きる事は、探しているものがないなんでもある世界で無限にある選択に迷い生きる誰よりも、幸せな事のように思えた。自分の音楽を弾く幸せを、愛しい友を、喜びを、夢のひとつひとつを、彼の全ての思いを永遠に閉じ込めた、あまりにも美しい光だった。2023/07/28
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