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出版社内容情報
7月は灼熱の昼下がり、幻覚にも似た静寂な陽の光のなか、ひとりの男がリスボンの街を彷徨い歩く。この日彼は死んでしまった友人や若き日の父親と出会い、過ぎ去った日々にまいもどる。タブッキ文学の原点とも言うべきリスボンを舞台にくりひろげられる生者と死者との対話、交錯する現実と幻の世界。
内容説明
七月は灼熱の昼下がり、幻覚にも似た静寂な光のなか、ひとりの男がリスボンの街をさまよい歩く。この日彼は死んでしまった友人、恋人、そして若き日の父親と出会い、過ぎ去った日々にまいもどる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
90
アントニオ・タブッキの摩訶不思議な世界。死者と生者が混じり合う7月末の灼熱のリスボン。著者であろうイタリア人の主人公が出会うのは、タクシーの運転手、ジプシーの婆さん、ペンション・イザベラのドアマン、亡き友人タデウシュ、若き日の父、灯台守の奥さん、物語売り、アコーディオン弾きなど23人のリストが初めに載っている。そしてこの本はポルトガル語で書かれている。まるで亡きペソアにこの本を捧げるかのように。悔恨は、帯状疱疹のように我々の身体の中で眠っている。そして、にわかに目を覚ます。それに対して人間は無力なのです。2021/07/31
きゅー
17
タブッキによる、ペソアに対するレクイエムと思って読み始めた。しかし実際には「わたし」の父、友人、好きだった絵画、そこで一時期暮らしていた灯台など、わたしを形づくっている人々や場所が登場する。つまりこれは自分自身の思い出への鎮魂歌なのだろう。そして、そのことに気づいた時に思い浮かんだのは、ペソアの『不穏の書』に度々登場する郷愁のことだった。本作では、私自身の郷愁とペソアの郷愁が重なり、二つの魂が共鳴しているかのような効果をもたらしている。幻想性と論理性の、俗なものと聖なるものとの調和を感じた一冊。2013/07/11
かもめ通信
13
『イザベルに ある曼荼羅』を読んでしまうと、どうしても立ち返らずにはいられなかったこの物語。久々の再読。本当は真夏に読むのがいいのだけれど、がまんできなかったのでw2015/04/26
Christena
10
ポルトガルの街の風景や匂いをリアルに思い出した。そんな空気まで描写するような文章。断片的なストーリーの連続で、どれも印象的。ボスの絵を模写し続ける男、ロカ岬の灯台守、カスカイスのレストラン、ビリヤード...。そして、美味しそうなワインや料理の描写が散りばめられていて、またポルトガルに行きたくなった。2019/03/09
johanna.K@よはんなと読む
10
7/29-8/1:7月の最終週が近付いたら本書を用意しましょう。そのまま7月最後の日曜日になるまで待ちます。図書館利用の方は返却期限に気をつけること。当日になりましたら、午前中に果汁飲料やミント入りの、モヒートのような飲み物をご用意下さい。可能であれば冷房も切ってしまいましょう。正午を回ったら楽な姿勢を取って、おもむろに読み始めます。・・・彼此のあわい、夢のあわいで、静かな散策と会話、美味しい料理をお楽しみ下さい。茹だるような夏の一日に是非。2012/09/02