出版社内容情報
サハラ砂漠のオアシスで純朴に生きていた羊飼いの少年が、移民労働者として渡ったパリで、その美しい肢体を買われ、CM映画やマネキンのモデルに仕立てられていく。彼は、翻弄され失われた自己を回復できるのだろうか。移民という現実と、映像文化と人間の問題を描く、巨匠トゥルニエの最高傑作。
内容説明
サハラ砂漠で純朴に生きていた羊飼いの美少年が、パリでCM映画やマネキンのモデルに仕立てられていく…。移民労働者の現実を背景に、映像文化に翻弄された人間の自己回復を描く、巨匠の最高傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
44
暗喩に満ちた小説で、一度読んだだけでは十全に理解したとは言い難い。表面はサハラ砂漠のオアシスからパリへと、主人公のロードノベルとも言える。ただその道中に写真と被写体、マネキンと子供達との挿話がいくつも挟まれ、全編がイマージュと徴について覆われている。ここでの徴は『魔王』ほど顕著に現れているわけではないけれども。表題となっている首飾り「黄金のしずく」も、一見通過儀礼のための聖具だけれどもそれ以上に何重もの意味を持ってそうで。意味を捉えようとしても追いきれない小説だが、ストーリーを追うだけでも面白く楽しめた。2015/02/22
根本隼
1
オアシスの美少年イドゥリスから次々と流出するイマージュ。その過程が移民労働者としての苦悩と重なり、現代フランスの問題を浮き彫りにしていると思いました。2016/11/03
...
0
あのトゥルニエの癖に、実に読みやすい物語だ。だからといって、彼が何をいいたいのかを掴むのが簡単なわけではない。ただ一読しただけではイマージュを、表面をさっとなぞったにすぎないだろう。 小説には、風景が浮かんでくるものと、そうでないものがある。この話は、どちらかといえば後者だ。サハラにいても、パリにいても、感じる雰囲気はさほど変わらない。2015/12/20