内容説明
情熱の都市セビリアを舞台に、希代の妖婦コンチャに魅せられ、炎を精練しつくした冷たい情熱にひきこまれてしまった一人の男が繰り広げる、苦悩と陶酔の華麗な絵巻。世紀末耽美頽唐派の代表的作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nina
31
19世紀末のセヴィリア。情熱のギターの音色にのせて、ただ腿の付け根までを黒靴下で覆い隠しただけの一糸まとわぬ姿で、艶かしく腰を振り上げ、狂乱のステップを踏み、ギラギラと輝く魔猫の瞳で男たちを誘う凄艶の処女。メドーサのようにひとたび彼女の瞳に魅入られた男は抗う術もなくただその足元に平伏すしかない。これが愛だと言って彼女の差し出す手はどこまでも幻であり、それを求める男はすべてを知りながらその幻影を命尽きるまで追いかけるのみ。彼は見たのだろうか。愛の苦しみの裏側にあるものを。世紀末のニーニャ・マラがここにいる。2014/12/27
きゅー
9
妖艶で悪魔のようなヒロインの歪んだ愛の形。恋愛のある種の極北をかいま見た気がした。この物語の人を惹きつけるところはヒロインの複雑な人物造形、それに起承転結のはっきりした筋だと思う。彼女のことをある型枠に当てはめて読み進めていると、ふいに逆の姿が見えてくる。そちらが実は真実だったのかと思っていると、やはりそれも違っていたことに気付かされる。男が彼女に振り回されていたのと同様に、読者も彼女に引きずり回される。終盤には序盤で繰り返されたモチーフが、今度は逆さになって再現される。読者を飽きさせない心憎い演出だ。2014/03/12
loanmeadime
4
ファム・ファタルという言葉では十分には表現されないコンチャ・ペレス。すごいですねぇ、怖いですねぇ。究極の寸止め生殺しを繰り返して、自らを罰っせさせるサディズムというのも恐ろしい。やられたら、精神を病むこと間違いなしで、しかも、それをするのが愛らしい少女ときたら・・自分をマテオにおきかえてどうするか、つくづく考えてしまいました。ブリジッド・バルドーの映画や数々の絵画、イラストなどなどあれこれ検索してしまいました。2019/10/21
世玖珠ありす
1
イタリアの上流社会の紳士が15歳の妖婦に振り回され、搾り取られる(お金ネ)お話。よくもまぁ、毎度毎度同じ手に引っ掛かるものだと呆れ、いっその事、力ずくで襲っちまえと同情してしまいました。妖婦なのに処女。元祖ツンデレですかねぇ。2009/10/31