名づけえぬもの

名づけえぬもの

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 269p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784560043486
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

出版社内容情報

肉体の死のあと暗闇のなかでしゃべり続け、おれはワームに出会った……。どことも知れぬ薄明の中で語り続ける声。自分をときあかそうとする語り手は言葉を重ねるほどに溶け去っていく――《小説についての小説》から《言葉についての言葉》にまで遡りつめた小説三部作の終編。

内容説明

肉体の死のあと暗闇のなかでしゃべり続け、おれはワームに出会った…。終末の世界へと導かれゆく小説3部作の第3部。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

NAO

74
マロウンやモロイは、名前を持っていることによってそこに存在している。ならば、名前の分からない「おれ」は、どうなのか。「おれ」の自分についてのイメージは、「しゃべっている大きなボール」。しゃべり続けることでどこまでも転がり続けていくことでしか存在意義がない。なぜなら、この世界に存在しているためには、言葉を発し続けなくてはならないから。だが、しゃべりながらも、「おれ」は何度も、「それはおれじゃない」と繰り返す。それは、「おれ」には名前がないから。しゃべりながらも、話す端から否定していくしかないという矛盾。2018/10/02

zirou1984

27
小説三部作ラスト。ここでは自己の名前を喪失した上に五感も機能しているのか定かじゃない主体が、己の存在を証明するためにと思弁に思弁を重ね続ける。しかし物語ろうにも言葉を語れば語るほど堂々巡りを続け、言葉の位相は合成することによって消失されていく。ベケットにより西洋形而上学の解体は執行され、主体の存在は失効されたのか。つまるところ我思う、されど我見つからず。一人称小説の極北どころか大気圏突破したかの様な本書を読んで残るのは真空の如き何もない、という感覚。なのに読んでいる最中は笑えて、泣けて仕方なかったんです。2013/05/06

長谷川透

22
名づけえぬもの、それは己のことか、否、名づけるものさえも分からないのだ。沈黙するれば、己が何者か分からぬ者は消滅してしまうだろう。そう、ただそれだけが怖いのだ。沈黙は死なり、だから彼は語り続ける。何者かを指示し、それを一先ず名付けてみせる。モロイ、モラン、マロウン、マフード、マーフィー、ワーム、名前巡りの遊戯の果てにどうなるか。堂々巡りの末に円環の成すのではなく、名付けられた束の間の存在が、束の間にだけ存在していた者を打ち消してしまうから、結局のところ何も残らない。己の存在を示すには、言葉は無力なのか。2013/12/08

ドン•マルロー

18
書くこと、語ることのあやふやさについて述べることは、それを書き記すこと、もしくは語り聞かせること、いずれかのフォーマットを用いた時点においてすでに自己完結的なあやふやさに満ちており、しかし自己完結的であるからこそ、そこに矛盾はなく、むしろこれこそが真の物語である、と断言したくなるような清々しい気持ちにさせられるのは偶然ではない。大袈裟ではなく、本作が世に出たことによってあるフィクションの時代が終わりを迎え、そしてまた新たな時代が始まったのだ。2019/06/29

Bartleby

15
何となく読み始め、途中で放り出してもいいやくらいに思っていたが意外に読めたし、ベケットにしてはわかりやすい。究極のひとりごと。何か深遠なことを言ってるのではないかと疑う必要すらないから楽。語り手は未生の赤ん坊であり、死を目前にした老人であり、人間以外の動物の意識のようでもある。他者の支離滅裂なひとりごとに長時間じっと耳を傾けるのははっきり言って苦痛だけど、日によっては可笑しくて仕方がなくなる瞬間があった。活字化されるとギョッとさせられるけど、きっとどんな人間の頭の中でも起きていることだと思う。2023/07/03

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/422987
  • ご注意事項

最近チェックした商品