内容説明
〈ヌーヴォー・ロマン〉に先駆的役割をはたした小説三部作の第一作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゅー
12
二部構成となっているが、第一部は形式的に退屈で、第二部は語り手が退屈な人物のため、読む気をだいぶ削がれる。しかし、これこそがおそらくベケットが意図した物語の終焉なのだろう。『ゴドーを待ちながら』では物語の展開を崩壊させたベケットだが、ほぼ時を同じくして執筆されたこの『モロイ』においては、従来の小説の形式的な枠組みを大きく取っ払おうとしている。そして両作品とも、意図を見失った登場人物たちが右往左往する。当然ながらアンチ・クライマックスが訪れ、謎は謎のままに残される。物語に対する葬送の物語だった。2015/08/31