出版社内容情報
失踪した友人を探してインド各地を旅する主人公。彼の前に現われる幻想と瞑想に充ちた世界。インドの深層をなす事物や人物にふれる内面の旅行記とも言うべきこのミステリー仕立ての小説を読みすすむうちに読者はインドの夜の帳の中に誘い込まれてしまう。イタリア文学の鬼才が描く12の夜の物語。
内容説明
失踪した友人を探してインド各地を旅する主人公。彼の前に現われる幻想と瞑想の世界。イタリア文学の鬼才が描く12の夜の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
68
何とも不思議な感覚にとらわれる。西洋人のインドに対する想いが静かに流れている。失踪した友人を尋ねてボンベイから南インドを巡りゴアに行き着く。そして、そこに自分の姿を見出す。混沌のインド。夢か幻か?現実感の希薄な魂の旅。インド人医師に「インドで失踪する人はたくさんいます。インドはそのためにあるような国です」と語らせてるのが印象に残った。訳は須賀敦子さん。著作は何冊か読んだが、訳書は初めて。巻末、須賀さんのタブッキについての解説も興味深い。「インド夜想曲」が一番わかり易い作品とのこと。どうして、なかなか・・。2019/05/15
♪みどりpiyopiyo♪
64
大きなことが起こらない朧げな物語が好きです。このお話も、異国の暑い夜をたゆたうような、心許なくも心がのびのびするような、心地よいお話でした。■叙情性ゆたかで詩的な世界。優しい眼差し。様々な謎めいた状況に読み手を置くことで神秘の国インドをより深く体験させてくれた様に感じました。浮遊感のあるお伽のような世界を自分も共に旅しているような心地になるのは、須賀敦子さんの訳文に依るところも大きいと感じます。■暑い季節に読めてよかった♪ 眠れない夜の読書にもおすすめの1冊です。(1984年)(→続2018/08/23
Gotoran
48
須賀著書繋がりで本書を読んでみたく。行方不明の男を探す主人公の幻想的な旅行記。読み進める内に、独特の摩訶不思議な世界の中に、知らず知らずいつの間にか、読み手も迷い込んでしまう。インドの神秘的で混沌とした空気が伝わってくる。静かではあるが、幻覚的でスピリッチュアルに満ち溢れた読後感が心地良い。2014/09/17
ふじみどり
22
イタリア人の主人公が行方不明の知人を探してインドを旅をするという目的を軸に、道すがら出会う人との静かな交流を描いた物語。導入部分や`引き延ばすとコンテクストが本物でなくなる`などややいい訳めいた会話で読者をなんとなく納得させつつも書きたいことだけ書くという手法に潔さを感じる。煙にまかれた感は否めないがやっぱりおもしろい。ごく自然な和訳もすばらしい。2013/01/31
Yuichiro Komiya
21
友人を探してインドを旅する話だが、全体的にシュールで幻想的な感じ。夢か現実かわからないような不安定さを感じる。占い師の兄を背負った少年の話は印象的だった。2017/07/09