内容説明
暴力をふるう夫を、レズビアンの恋人と謀って毒殺した実際の事件を基に、夫との出会いから裁判に至るまでの、刻一刻の女の心理を鮮やかに描き出す。『ベルリン・アレクサンダー広場』で大都市小説の金字塔を打ち建てた奇才デープリーン異色の実験作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mortalis
6
実際に起こった事件を小説として再構成。登場人物たちの内外で何が起こっていたかを追う。「私はこの事件の難しさを描きたかった。…他人の人生を…理解することは可能であるとする世間一般の常識を拭い去りたかった」という意図を、繊細かつパワフルな洞察を展開することで示す。この仕事はそこらじゅうにいつでも蔓延る野蛮な短絡や単純化に対して常にヒューマニズムのありうる方向を示すように思われる。対象としての精神現象の広大深遠に表面科学者のような態度で対しながら精神から結果する人間形姿の可憐さに魅惑され続けるこの作家の成果。2017/06/18