内容説明
略奪されたユダヤ人の財産は戦後、どのように返還されたのか。また、その補償はどのようになされたのか。例外的に成功を収めていった財産返還問題について、パレスチナ問題までをも視野に入れて論述していく。
目次
第1部 略奪(アーリア化;占領地域での略奪)
第2章 返還(「ユダヤ民族」を相続人に;ドイツの返還;公共財産の処分)
第3部 補償(冷戦後の再展開;アメリカの法廷でホロコーストを裁く;ホロコースト財産とイスラエル)
著者等紹介
武井彩佳[タケイアヤカ]
1971年生まれ。早稲田大学第一文学部史学科(西洋史専攻)卒業。文学博士(早稲田大学、2004年)。早稲田大学法学部比較法研究所助手を経て、現在、学習院女子大学国際文化交流学部専任講師。専門はドイツ現代史、ユダヤ史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Toska
12
奪われた命は二度と戻らないが、財産はそうではない。ナチスが奪い取ったユダヤ人財産をめぐり、略奪・返還・補償の3フェイズに分けて分析した労作。重いテーマを扱っていながらテキストは明晰で読みやすい。研究者としての文才を感じる。エルサレムでの経験を振り返った「おわりに」も味わい深い。『歴史修正主義』で一躍有名となった著者だが、その他の作品も広く読まれてほしいと思う。2024/02/13
Arte
4
ホロコーストは殺人ではなく、強盗殺人。第二次大戦後、各国の法律の壁はあるものの、ユダヤ人がナチに奪われた財産の補償は一応行われ、イスラエルでの難民の生活に回されたらしい。ユダヤ人社会がほとんど崩壊した後の墓地の管理をどうするかも問題になり、ドイツではユダヤ人墓地は公的資金で維持されるらしい。ホロコーストの後始末を語った本で非常に興味深い。お勧め。2020/09/17