出版社内容情報
ネパール・ヒマラヤにそびえ立つ「恐怖の峰」ジャヌー。1976年プレ・モンスーン、不可能の烙印を押されていたその北壁に、青春を賭けた若者たちは、苦闘の末、ついに7710メートルの絶頂に立った。自ら頂上に立ち、大量16人登頂の快挙をなしとげた小西隊長が綴る感動の手記。
内容説明
今日、到着した地点から、ジャヌー7710メートルの絶頂は、まだ頭上1700メートルの高さでそそり立っていた。「俺たちはお前の頭上に、必ず全員で立ってやる!」荒れ狂う北壁に向かい、僕は胸の中で大声で叫んだ。隊員16名、シェルパ11名、27人の勇敢な男たちと大北壁との、壮絶な闘いがいよいよ本格的に開始された。
目次
1 ジャヌーを眺め、闘った男たち
2 計画の誕生
3 日本での準備
4 カトマンズ、ダーランにて
5 キャラバン
6 ニュージーランド人の岩稜
6 巨大な氷の滑り台
8 7710メートルの16人の男たち
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つちのこ
3
1983年頃読了。この本で怪峰ジャヌーの存在を知った。メスナーによるアルパインスタイルが始まった当初、極地法によるスタイルでの登攀であるが、多くの登頂者を出した山学同志会の結束の固さと小西のリーダーシップが素晴らしい。
yuji
2
山にのめり込んでいた20年以上前に読んだものを再読しました。今読むと小西の隊長としての仕事ぶりに共感します。規模が大きくなってもタスクを明確に分解し、着実に積み上げればゴールに到達する。それはルーチンワークになり登頂しても感動すら感じない。あるのは完了した安堵感のみ。今の自分の仕事とダブって、プロジェクト管理の視点で見てしまいました。アルパインスタイル、アジャイルと言ってもプロジェクトを成功させるためには個人の能力、組織力、チームワークが重要です。何事も成長途上が一番楽しいですね。2021/11/24
CEN
0
小西政継の北壁シリーズ三冊目。アルプス三大北壁を終え、ついにヒマラヤに聳える7710mの怪峰ジャヌーの北壁に挑む鉄の意思、山岳同志会の大登攀記録。小西政継その人を表すような内容は、いつもにも増して慎重かつ細やかな計画と段取りと対策。今回は個人的な感情より登山隊隊長としての思考錯誤や思いで巡らされている感じかな。大規模な包囲戦による登山本を読んでいると、アルパインスタイルによる最小限の装備で頂に挑戦する、近代速攻登山のアルピニスト達の本を読んでみたくなる。ということで、またなんか探してみよーっと。2012/11/22
梅子
0
ジャヌー北壁7710m初登頂を勝ち取った1976年小西隊の記録。極地法なので現代の登攀記録と比べると各人の行動が徹底的に管理されていて軍隊のようにも見える。しかしそれは、隊員の全員登頂を目指したが故のやむを得ない選択だったと思う。直前に登攀失敗したニュージーランド隊の残置ピトンやザイルがあったとはいえ、綿密な計画をほとんど遅滞無くこなし、シェルパ含め総勢16名が登頂に成功したのはやはり凄い。小西隊長自身が代筆していると思うのだが、他隊員の登攀中の心情や感銘も鮮やかに表されていて、物書きとしても流石の一言。2019/01/13