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内容説明
この世の終わりを叫ぶ神父、ホメロスを暗唱するオウム、蝋で固めた翼で飛び立とうとする男…近代化から取り残されたギリシアの寒村の運命とは?神話的小宇宙を鮮やかに描き出す“マジック・リアリズム”の世界。
著者等紹介
カルネジス,パノス[カルネジス,パノス][Karnezis,Panos]
1967年ギリシア生まれ。四歳からアテネで育つ。92年、工学を学ぶためイギリスに留学。博士号取得後、シェフィールドの鉄鋼会社で働く。その後、イースト・アングリア大学創作科に学び、2002年に短篇集Little Infamies(邦題『石の葬式』)でデビュー。04年には初の長篇小説The Mazeを発表し、ウィットブレット賞処女長篇小説賞の最終候補作に選ばれた。現在、オックスフォード在住
岩本正恵[イワモトマサエ]
1964年生。東京外国語大学英米語科卒。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
68
刊行当時35歳だったギリシャ人作家のデビュー作。戦後のギリシャの小さな貧しい村で起こる出来事を描いた短編集、だけど一つの長編としても読める。神父さんや村長さんをはじめてとしてキャラクターがいいです。はじめの中編から、現実と幻想の間を行き来して、かってそこにあったかもしれない異世界を堪能しました。2017/12/06
白玉あずき
44
読ませる、上手い、一気読み。だけどあまりに著者の人間に対する冷笑癖がすぎないか? 辺鄙な谷間の寒村(戸数27軒)の人々の厳しすぎる日常。現実と神話のあわいに淀むような村の生活が、くっきりと立ち上がる筆力は素晴らしい。地主、肉屋の最後にも納得の世界観。不条理で破壊的で暗くて、最後のオチたるや・・・・まあ、綺麗に片が付いたという事で。そういえば、ギリシャの神々も不条理で残酷だった。 2021/02/07
miyu
28
テオ・アンゲロプロスが大好きだ。なのでその世界観を読むことで体現できそうな本書に興味津々だった。訳が岩本正恵さんでもあるし。さて幾つかの作品を除いて全編がえらく短く、ほんの10頁にも満たないような小編が20近くも次から次へと続く。それも極めて狭い村でのあれやこれや。誰もが狭量な人ばかりですごい閉塞感だ。読み進めるのにかなり難儀した。アンゲロプロスだと思って読むとちょっと違うかなぁという感じなのだが、確かに彼の映画には狭い世界で自身の思惑に振り回され続ける底辺の人々も出てくる。とても毛色の変わった作品集だ。2014/11/19
南雲吾朗
24
神保町のブックフェスで買った一冊。絶版になっているとは知らずに買った。新品だった。神田・神保町は、やっぱりすごいなぁ。楽しいなぁ。っで、肝心の本だが、ギリシャの作家は初めてだった。舞台は谷間のうら寂しい寒村。個性的な住人。地震で始まり、水没で終る。スケールは大きくないがガルシア・マルケスの百年の孤独になんとなく似た感覚を覚えた(スケールめちゃくちゃ小さいけど)。読んで行くうちに味わいがなんとなくわかって来ました。良い勉強になりました。2017/11/28
きゅー
15
ギリシアの寒村を舞台とした連作短編集。ほとんどの短編に意地悪、冷酷な人間が登場する。狭い世界での生々しい嫉妬や憎悪に関わる物語がこれでもかと続く。濃く入れたコーヒーを飲んだ後のような、喉のひりつく感覚が残る。まず冒頭の「石の葬式」から気持ちの悪い物語。タイトルともなっているこの短編でこの村の閉塞感、腐り切った倫理観が真正面から描かれ、全体の色調が予感される。気だるさが蜜のように全身を覆っていくうちに最終篇にたどりついた。最終ページの最後の数行で、清水が喉を潤すようにすべてが洗い流されるのだが。2012/10/26