内容説明
胸をうつ懐旧の情と祝祭的な笑いに彩られた11の連作短篇。『シカゴ育ち』のタイベック、待望の最新作。
著者等紹介
ダイベック,スチュアート[ダイベック,スチュアート][Dybek,Stuart]
1942年シカゴ生まれ。1980年、第一短篇集Childhood and Other Neighborhoods、1990年、第二短篇集The Coast of Chicago:『シカゴ育ち』(白水社刊)。現在ミシガン州カラマズーに住み、ウェスタン・ミシガン大学で文学を教える
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年生。東京大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
22
シカゴの、おそらく移民の多い下町に暮らす少年についての連作。少年の弟、朝鮮戦争で捕虜になっていて精神を病んだ音楽好きの叔父、黙々と働き無駄を極端に嫌う父親、悪いことも馬鹿馬鹿しいことも全部一緒にする友人たち、虚弱でおそらく生きられないとされた男の子が奇跡的に生き延び下町の人々に見守られながら何とか生きる、何事も達成しないようでいてそれなりに立派に生きて、ひとかどになろうとしてそれも自分が思い描いた一角でではなく、何となくほとんど全ての人に当てはまりそうな物語だった。面白かった。2024/12/06
aoneko
19
細部のふらくみや文章の奥行きと端々の煌めきに、なんて豊かなんだろうとうっとりした。シカゴの街を舞台にした連作短篇集だが、シカゴではない、かつて訪れた場所へのいざない。歳を重ねた未来の自分、今の自分、過去の自分。それぞれの視点から、其処にある/あった風景も人も眺めていた。「記憶」を扱った小説らしく、どこかの場面がフックになり、芋づる式に何かが呼び起こされるのかもしれない。敢えてドラマティックにしなくても、現実の先にドラマは幾らでも起こりうる、解き放たれた伸びやかさを感じた。2015/07/03
あーびん
17
様々なキャラクターの視点から立ち上る濃密なシカゴの記憶。路地の匂いから思い出す少年時代。ドラマティックな事件はとりわけ起こらないが、私たちの日常なんていつだってそんなものではないか。ほんのささやかな人生の不協和音がせつない余韻を残していく。ダイベック、やっぱりいいなぁ。2018/09/29
春ドーナツ
13
本書には追憶がびっしりと書き込まれている。11冊の長篇小説を乱読したような高揚感に私は包まれている。「記憶とは過去がその力強いエネルギーを伝導するための回路なのだと。そうやって過去は愛しつづけるのだ」(『マイナー・ムード』から抜粋) 高架電車の走る街・ポーランド系アメリカ人・カソリック。本来なら異物であるはずの私の記憶も渦巻きのように混ざり合う。失くしたはずの心の欠片が浮かび上がってくる。切ない。とても切なくなる。2018/05/29
DEE
10
シカゴのあまり美しいとは言えない場所で感じられるであろう町の空気。そこで暮らす僕と弟ミック、そして父親のサー。いつもの生活に入り込む恋や犯罪。そういう雰囲気をじんわりと味わえるのではないかな。自分はあまり楽しめなかったけど。2020/02/22