出版社内容情報
異才作家がゴヤ、ジョルジョーネ、モランディなどの絵画に目を凝らし、意外な発見、見る悦びをスリリングにつづる。
内容説明
「真珠の首飾りをもつ女」の細部に描かれた、小さな球体が意味するものは?アメリカの異才作家が、ゴヤ、ジョルジョーネ、モランディなどの絵画に目を凝らし、「見る」悦びをつづる。
目次
第1章 途方に暮れる楽しみ
第2章 フェルメールの受胎告知
第3章 赤いクレヨンをもつ男
第4章 テーブルの上の幽霊
第5章 肉体が語る―ゴヤの「ロス・カプリチョス」
第6章 さらにゴヤ―「絵にはルールがない」
第7章 ジョルジョ・モランディ―ただの壜ではなく
第8章 ジョーン・ミッチェル―色彩の記憶
第9章 ゲルハルト・リヒター―なぜ描くのか?
著者等紹介
ハストヴェット,シリ[ハストヴェット,シリ][Hustvedt,Siri]
1955年、アメリカ・ミネソタ州生まれ。作家。ノルウェー語の本の英訳を手がけたのち、短編小説を発表しはじめ、文壇の注目を集める
野中邦子[ノナカクニコ]
1950年生まれ。多摩美術大学絵画科卒業。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
91
著者はポール・オースターの妻で作家のシリ・ハストヴェット。この本は彼女の絵画に関する私見が記述されている。絵の前で何時間も見たり模写することで、専門家も気が付かない新たな発見をいくつか指摘している。表題のフェルメール「真珠の首飾りをもつ女」では、絵の女性はイタリア絵画の受胎告知のマリアのポーズと同じと気付く。確かにフェルメールはカトリックに改宗しており、壁に元々あった地図の消した跡や左上に小さく光る点と斜めの光が精霊と啓示を示すとは、今まで誰も指摘したことはなかった。また更にゴヤの有名な「マドリード、5→2020/09/05
nobi
67
「ナイン・インタビューズ」で気になっていた作家、が、フェルメール? 頭脳明晰偏執狂的で打ち解けないという印象は「はしがき」でも変わらなかったけれど、ジョルダーノフェルメールシャルダンゴヤ…を語り始めると、冷静な思索者は凄腕の探偵へと変貌する。一部が記憶から抜けた理由?卵の寓意?両手のしぐさ?隅の暗いスペース?謎を追いかけているのが私自身であるかのような錯覚を与え、醜さの前でもたじろがない気迫がある。”MYSTERIES OF RECTANGLE”(原題)に引きずり込み私という「見物人を証人に変えてしまう」2016/10/15
松本直哉
23
むろんフェルメールに受胎告知の絵はないのだが、表紙の絵を4時間見つづけた著者に突然降ってきた言葉が受胎告知だった。よく見ないと気づかない画面の隅の卵の発見、未知の光を浴びて半ば驚いているかのような表情、首飾りを持ち上げる両手は、祈りのためであるかのように。著者の推測があたっているかどうかよりも、絵と向き合い、絵と対話しながら生まれる思いがけない視点、音楽の楽譜の全く新しい解釈を聴くような発見の喜び。真剣に絵を見るとはどういうことかを教えられる。晩年のゴヤの絵に散見される隠された自画像を辿った論考も良かった2024/06/08
くまこ
6
アマチュア美術愛好家である著者が、独自の視点から名画を解説した随想的小論文。カバー装画『真珠の首飾りを持つ女』は、半分近くを占める黒が気になり、あまり好きな作品ではなかったが、本書から謎解きのヒントをもらい、探究心を刺激された。フェルメール以外では、ゴヤとリヒターの章が印象的。絵画への愛情と造詣が醗酵し、繊細な筆致のグラスに注がれた本。酔い心地よく読めた。2013/04/03
スエ
4
一冊まるまるフェルメールかと思いきや、実際は全9章のうち、フェルメールに触れているのは1章分だけ。原題にも「フェルメール」なんて単語は使われていないようで、見事に邦題詐欺に引っかかったのでありました。……と、とりあえず苦言をていするわけですが、「真珠の首飾りをもつ女」の手の形や窓枠のうえの謎の卵など、興味深い内容ではあった。ゴヤの「5月3日」に隠された自画像、シャルダンの静物画などなどなんだかんだで勉強になった。2015/04/18