出版社内容情報
フランス世紀末の文学・芸術を特徴づけ、後のシュールレアリスムを準備したデカダンスの世界像と美学を平明に記述・分析した名著。
内容説明
神話、伝説、夢、麻薬、幻想…ロマン主義を源としシュールレアリスムを準備した、十九世紀末デカダンスの想像力。フランス文学・芸術史上もっとも魅惑的な時代の“想像界”の基盤となった、世界観や美学を解き明かし、デカダンたちの多彩な作品群の開花を鮮やかに分析する。
目次
第1部 デカダンスの想像力の基盤と背景(デカダンスの時代;精神の地平;宗教的不安;無意識と性欲)
第2部 デカダンスの想像力の諸形態(幻想の変遷;人工楽園;伝説の世界;基本要素の夢)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
7
19世紀末に隆盛を極めたデカダンス文学についての教科書的記述。非常に多くのものごとについて触れているため、研究のヒントになる示唆に富むように思える。客観的に見て、ユイスマンスの存在感の大きさに改めて驚く、逆に正当に評価されていないだけだろうが。ゾラが植物の記述において優れてデカダンな文章を書いていたことに驚く。個々の作家を見ただけでは、彼らが特殊なことをしていたように感じるが、オカルティズムに至るまで、当時のブームってものにかなり依拠し、逆にそれを作ってもいたことがよく分かる。2012/10/10
rien
2
デカダンス研究の古典。19世紀末フランスに関心を寄せる方には必読です。昔読んだなという方は、再読すると良いでしょう。以前とは違った様相が見えてくるはずです。2014/08/18
守屋周作
1
著者ジャン・ピエロが1974年に提出した博士論文の一部。第1部がデカダンスの想像力の基盤と背景、第2部がデカダンスの想像力の諸形態。第2部が中心のはずだが、おもしろかったのはむしろ第1部。19世紀末の20年間と20世紀最初の15年間の違いのなんと鮮やかなことか。著者は、デカダンスの多様な表現形式を描いたが、結局デカダンスの原理を把握していない。それは、ブールジェやH・エリス、周作人の頽廃論と比べるとわかる。致命的な欠点は、著者が仏文学史とその周辺の英文学史しか検討しなかったという点にある。2012/07/23