出版社内容情報
『大衆の反逆』で現代社会の危機を鋭く予見した著者が、「慣習」という概念をキーワードに、個人の単なる寄せ集めでない「社会」の本質に肉薄する。
内容説明
歴史の中で推進力として働く「慣習」の力をてこに、社会的なるものを人間的生についての形而上学の中に組み入れ、個人と社会との独特の現象を見出そうとした、不朽のメッセージ。
目次
自己沈潜と自己疎外
個人的生
「われわれの」世界の構造
「他者」の出現
対個人的生 われわれ‐なんじ‐われ
ふたたび他者たちとわれについて
彼女への短い旅
他者という危険ならびにわれという驚き
とつぜん人びとが現われる
挨拶に関する考察
挨拶に関する考察‐語源学的動物たる人間‐慣習とは何か
人びとの言説たる言語―新たな言語学に向かって
人びとの言説、「世論」、社会的「しきたり」―国家権力
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
13
オルテガ三冊目。人間の生をないがしろにする社会学全般への批判もこめつつ、個人の在り方から他者性・集団性へ敷衍していって最後に社会の姿を描写するという堅実な流れの一冊だが、そんな体裁の中でも溢れるロマンチシズムが魅力であり、同時に危ういところでもある。自我よりも先に集団的意識があったという指摘にも顕著なように、人間の本質を規定することへの意識が強い作家。挨拶など我々が普段自然に行う慣習に目をつけ、言語学を経由しなから国家の権力構造と個人の自由の根源、双方向へと分析を進められる知性と筆力は見事というほかない。2017/02/06
p-nix
1
社会とは何か。個人と社会の関係性。かなり現象学的アプローチだったので自分には腑に落ちる点が多かった。60年くらい前の書物なので古い個所はあるけど。2015/06/17
\サッカリ~ン/
1
WW1~2付近の社会科学が大きく発達した時期に発表された本。ただ、この手の本を初めて読む人には正直難しすぎる&長すぎる内容だと思うので(そもそもそんな人が本著を手にするかどうか疑問だが)、同作者で有名ドコロの『大衆の反逆』を先に読んで場ならしすることを強くおすすめする。『大衆』や『社会』という言葉が学問的な意味で使われ始めた時代の本なので現在とは世相や価値観など若干異なるところがあるが、それが逆に一種のノスタルジーのようなものを醸し出す2012/09/28