出版社内容情報
科学および科学史に関するバシュラール思想の核心を伝えるべく編集された好著。フーコーやアルチュセールの理解にも必読の書である。
内容説明
本書の認識論は、物理学的および化学的な諸科学の現代の進歩にたいするほぼ四分の一世紀にわたるはりつめた注意と、哲学的認識理論にたいする断固たる論戦的警戒と、これらの組み合わさった関心の成果であるが、不断の「自己論争」においてこの認識論固有のカテゴリーを改める漸次的訂正とから構成されている。
目次
出発点(現代諸科学の「新しさ」;哲学の「怠惰」 ほか)
第1部 認識論の領域(認識論的領域という概念;物理学の認識論 ほか)
第2部 科学認識論の重要カテゴリー(応用合理論;技術的唯物論 ほか)
第3部 科学史にむかって(連続か不連続か?;歴史的綜合とは何か ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
D・クレール編集の本書は、連続性という錯覚を与え、不連続を発展と解釈してきた科学史を批判した著者の論考を収録する。本書は科学を文化の連続性という教育的背景から捉え、その「常識」が連続を作り出す起源なるものを科学的営為に認めないという立場を採る。日常のドグマ(認識論的障害)を切断するゆえに祖先を持たないという科学の漸進的創発の知的営為の特徴を、著者は「認識論的断絶」と呼んだ。ここから本書は、歴史の連続性という観念が細部を忘却することで成り立つとし、細部から刷新する科学の客観性への努力を歴史的総合と捉える。2024/11/12
しお
0
合理的唯物論をはじめとするバシュラールのエピステモロジーの重要概念構想を端的につかむことのできる選集である。『新しい精神』などを参照する必要に鑑みて論点紹介等は割愛するが、形態的なものについて申すなら、科学史の連続性を称揚するないし自然科学の権利を(言い過ぎだが)牽制する哲学者たちの営為、あるいは他方の科学の教育者の歴史に対する無頓着を批判するテクストが、サンプリングボイスのように脱文脈的に断片が構成されていることが少し奇妙なものにも映らないでもない。2020/07/12