感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
16
ヤバい。べらぼうにおもしろい。本書にはオルテガの美術・芸術論が4つ収録されているが、特にベラスケス論は圧巻。伝記的事実と作品解釈をこんな有機的につなげることができるなんて!作家と作品は別物と考えるべきという立場を自分はとっていたが、修正を加えるべきかもしれない。歴史を詳細に調べることで既存の作家像を破り捨て、作品に新たな広がりを持たせる論の進め方が明晰で鮮やかで、批評に興味ある人は是非読んだらいいと思う。ワーグナーとドビュッシーを比較対象にして、新芸術の反大衆的態度を読み解いた「芸術の非人間化」も名文。2017/02/16
貴人
7
ベラスケスに関する分析は、まさにオルテガらしいその人物の生全体を射程に入れた新鮮なもの。従来の定説だった宮廷仕事に時間を取られたベラスケス像をひっくり返し、画家ではなく貴族たらんと生きたベラスケス像の提示。ベラスケスがおかれていた当時の画家としては考えられない稀有な環境。芸術にも反映されている距離をおく名人だった人間ベラスケス。世界を支配していたイタリア絵画の価値観を完全に転倒させた静かなる革命児ベラスケス。こんな興味深い著作が完結しなかったのは実に惜しい!。しかし、未完でもこの輝きは決して色褪せない。2015/03/29