内容説明
ジル・フォコニエのメンタル・スペース理論は、意味論と語用論を統合するダイナミックな言語理解理論の構築を目指している。言語は、単に外部に存在する世界やモデルを正しく、あるいは誤って「表現」するだけではなく、メンタル・スペースと呼ばれるそれ自身の世界を作る。メンタル・スペースとは、文法的知識と言語外的一般知識の相互作用が行われる認知インターフェイスである。ところが、自然言語の文の意味は、多くの場合、メンタル・スペースの構成を一意的に決定するほど十分には規定されていない。そのため、解釈の一般原則により、比較的単純な意味から、多様で複雑な解釈が生み出される。本書の理論は、こうした解釈の生成過程に焦点を当てることで、統語・意味の構造的複雑さの仮定が誤りであることを明らかにし、意味研究の新しい方向を示す。
目次
1章 語用論的関数とイメージ
2章 役割と多重コネクター
3章 前提―浮遊、転送と投射方略
4章 反事実的条件文と比較文
5章 間スペース操作子、哲学的問題および将来の展望