出版社内容情報
本書は酪農通史である「第一編 日本酪農の近現代--牛乳を通して学ぶ歴史構造」と、100年企業を含む6つの地域乳業への聞き取り「第二編 地域乳業の生命力--地域の事例から学ぶ産業史」から構成されている。
ウクライナ戦争を契機とした食糧危機をはじめ、現在、日本の酪農産業は未来への危機意識や閉塞感が高まっている。その中にあって酪農産業の「生命力」とはなにか? 答えの鍵は日本の牛乳市場の8割を占める「地域乳業」の中にある。6企業の事例研究と、日本の酪農通史から、持続可能な未来への新しいカタチを探究する。
【目次】
はじめに
第一編 日本酪農の近現代--牛乳を通して学ぶ歴史構造
◆序章 近代酪農産業の前史とその文化的な性格
古代から近世までの日本の乳の生産と利用
「ヒトと牛の関係性」とミルク利用の関係構造
◆第1章 明治期--牛乳搾取業の誕生と展開
1-1 外国人居留地から始まった乳用牛の飼養と乳利用
1-2 築地牛馬会社と士族授産
1-3 東京で広がった牛乳搾取業の状況
1-4 牛乳衛生ルールの整備と強化
◆第2章 大正・昭和戦前期--農民的酪農の登場
2-1 都市から農村へ--商業的酪農の停滞と農民的酪農の発展
2-2 商業的酪農が停滞した要因とは
2-3 農民的酪農が拡大した要因とは
2-4 「牛乳営業取締規則」の大改訂が与えた影響
2-5 戦時下における牛乳搾取業者の衰退
◆第3章 戦前戦後有畜農業政策と酪農の展開
3-1 戦前の「有畜農業奨励規則」と農村の経済更生
3-2 戦後の酪農ブームと「有畜農家創設事業」
◆第4章 製糖・製菓資本の市場参入と大手乳業の誕生
4-1 練乳事業への本格参入へ
4-2 事例1 明治乳業の誕生
4-3 事例2 東京の牛乳市場をめぐる競争
4-4 事例3 森永乳業の誕生
◆第5章 戦後における酪農産業の急速な発展
5-1 農村部での生乳生産ブームと乳業事業の再開/昭和20年代
5-2 体系的な産業政策としての「酪農振興政策」
5-3 大手乳業の牛乳市場への進出/昭和30年代
5-4 飲用牛乳市場の競争関係/昭和40年代
◆第6章 小売業の流通革命から現在に至るまで
6-1 量販店の台頭と牛乳市場の競争激化/昭和50年代以降
6-2 生乳流通に変化をもたらした主な動き/平成・令和以降
◆終章 わが国酪農産業の時代区分とその特徴
第二編 地域乳業の生命力--地域の事例から学ぶ産業史
◆序章 牛乳流通構造の変遷
明治時代以降のサプライチェーンの形成と変遷
昭和戦前期から平成10年代以降までの傾向
業態が多様化すれば、競争構造も変化する
◆第1章 地域乳業の歴史構造--事例1「YUDAミルク株式会社」
1-1 YUDAミルク(旧湯田牛乳公社株式会社)の現況
1-2 創業の背景
1-3 事業展開の特徴と課題
◆第2章 地域乳業の歴史構造--事例2「トモヱ乳業株式会社」
2-1 トモヱ乳業株式会社の現況
2-2 創業第1期・前期(1956-75年ころ)
2-3 創業第1期・後期(1975-93年)
2-4 創業第2期(1994-2012年)
2-5 創業第3期(2013年-現在)
2-6 地域乳業にお学校給食牛乳の役割
◆第3章 地域乳業の歴史構造--事例3「新潟県農協乳業株式会社」
3-1 新潟県農協乳業株式会社の現況
3-2