内容説明
床屋の椅子は、いつから坐り心地がよくなったのか。旧帝国ホテルの設計者、フランク・ロイド・ライトが自らデザインした椅子に込めたものは。体の大きなマッカーサーが日本上陸後に使った椅子と、体の小さな吉田茂が愛用した椅子の違い。この一〇年で、自動車のシートはどのように変わったか。椅子の試作開発に永年携わる職人・宮本茂紀が、半世紀にわたって関わった椅子を、ものづくりの現場にいる者ならではの経験と洞察力で語る。歴史を彩った椅子から世界で活躍するデザイナーの椅子、そして暮しのなかの椅子まで。類書のない、椅子の物語であり技術史である。
目次
ビートルズが呼んだ不景気―床屋の椅子
ここ一番の家に使った「虎斑」―F.L.ライトの椅子
技術者のなかにもファンをつくった―倉俣史朗の「ホフマンへのオマージュ」
高知産ムロの木づくしの心意気―八芳園の「壷中庵」洋間の椅子
ロココの椅子に取りつかれた男―上柳博美の仕事
大きな人の小さな椅子 小さな人の大きな椅子―マッカーサーと吉田茂の椅子
イタリアモダン、人気の秘密はディテールにあり―マリオ・ベリーニの「キャブ」
傍らに置いてかみしめる憧れと教訓―ハンス・J.ウェグナーの「ジ・オックスチェアー」
材料からつくり方まで徹底的にエコロジー―ウィルクハーン社の「ピクト」
家具の技術と値段について―モロゾ社の「BIG MAMA」〔ほか〕
著者等紹介
宮本茂紀[ミヤモトシゲキ]
昭和12年、静岡県の伊東に生れる。昭和28年、東京・深川の斉藤椅子店に徒弟として就職の後、椅子張職人として、芝を中心に数多くの仕事をする。その間に都立日本橋高校卒業。昭和41年、五反田製作所を開設。58年に量産家具のための会社としてエリアント、61年には、試作開発のためのミネルバを設立。帯広に、椅子張地の研究を主に行う宮本茂紀研究所がある。労働省中央技能検定委員、東京椅子張同業者組合連合会会長、全日本椅子張同業組合連合会専務理事をそれぞれ歴任。日本では数少ない椅子のモデラー(試作開発をする人)として、メーカーやデザイナーと組んで多彩な活動をしている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。