出版社内容情報
明治以来の数学教育史において最も重要な人物である藤沢利喜太郎と遠山啓の人と仕事を描写・考察する。これからへの問題提起の書。
内容説明
数と量をめぐる2つの理論。藤沢:量の放逐+数え主義、遠山:量の定礎+水道方式を論究する!…さて、“第三の理論”は?
目次
第1章 藤沢利喜太郎の生涯(藤沢の出生と名前;藤沢の学歴初期に関する記録 ほか)
第2章 遠山啓の生涯(遠山の誕生から大学入学まで;東京帝国大学から東北帝国大学へ ほか)
第3章 開拓者としての藤沢利喜太郎(明治初期の算術教育;明治20年代の算術教育 ほか)
第4章 改革者としての遠山啓(数学教育の基礎としての“量”への開眼;クロネッカーの「数の概念について」 ほか)
第5章 藤沢と遠山の比較人物論(藤沢と遠山の比較対照表;藤沢による寺尾評と遠山による藤沢評 ほか)
藤沢利喜太郎及び遠山啓の著作に関するブックガイド
著者等紹介
上垣渉[ウエガキワタル]
1948年兵庫県に生まれる。現在、三重大学名誉教授、全国珠算教育連盟学術顧問。(元数学教育協議会副委員長、元日本数学教育史学会会長)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yanagihara hiroki
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「算術は学ではない」のでひたすら習熟すべしとして、寺尾寿の「理論流」を激烈に批判した藤沢と、考えることの大切さを説いた遠山という構図で描かれた本(藤沢はいわゆる「三千題流」にも批判的だったらしいが)。どちらも必要なのは当たり前として、「考えるより慣れろ」は内田義彦の「天皇の系統図を『暗記物』として覚えてきた我々」にもシンクロする。文明の花実を導入し、その根に目を向けないままの明治維新とも。藤沢の主張の誤用もマジョリティが考えることを放棄したがるこの土壌ならではであり、現代の青チャート周回も不可避の過ちか。2023/09/19