内容説明
現代中国の著しい特徴として大規模な人口・労働移動がある。その主流は数千万人ともいわれる農民の都市への出稼ぎである。日本の人口の3分の2ほどの農民が、毎年職を求めて都会に出ていくのである。都会に就職の当てがあって農村を離れるのはごくわずかで、大部分は地元出身の先行者からの口コミ情報を頼りに都会に出現する。80年代中頃には、こうした農民の大群が北京市や広州市の鉄道の駅前広場にたむろしているシーンが、たびたびテレビ等に登場した。都市住民が彼らに対して持つイメージはネガティブなもので、ひところ使われた「盲流」という呼称には、差別的なニュアンスが込められている。それゆえ最近では、より客観的な表現で「民工潮」と呼ばれることが多い。本書のタイトルである「流れゆく大河」は、こうした現象を描写するものである。
目次
第1部 研究の課題と展望(経済発展と農村労働移動:概観と研究の枠組み;中国農村労働移動の研究展望)
第2部 出稼ぎ労働の源泉(農村経済の変貌と労働市場;農家労働供給と出稼ぎ ほか)
第3部 出稼ぎ労働の受け皿(都市労働市場と農民工;企業内雇用構造と農民工 ほか)
第4部 まとめ(政策的提言:秩序ある労働移動に向けて)