出版社内容情報
無罪判決に関する検察の控訴審議はベールに包まれている。元検察官の著者が弁護士出身の検察官を主人公にその実態を赤裸々に描く。法曹関係者必読のフィクション小説。
内容説明
厚いベールに覆われた検察内部の世界を、赤裸々に、そしてリアルに描き出す。
著者等紹介
市川寛[イチカワヒロシ]
1965年神奈川県川崎市に生まれる。1989年中央大学法学部法律学科卒業。1993年検事任官。横浜地検、大阪地検、佐賀地検などに勤務し、2005年辞職。2007年弁護士登録(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おさむ
30
著者は、自白強要がバレて検事を辞めた弁護士。無罪判決を巡る検察内部のゴタゴタをリアルに「小説」で描く。世間の検察への過度な信頼が逆に、検察無謬主義に陥らせているとの指摘は鋭い。個人的には、「九州モンロー主義(福岡高裁管内ばかり回っている裁判官は東京や大阪に来ると、平気で無罪判決を出す)」や、「転勤無罪(異動間際の年度末に無罪を出して検事から逃げる裁判官のやり口)」といった、法曹実務のトリビアがさりげなく入っているのが、興味深かった。2020/12/09
detu
18
新聞紹介。面白かった。司法物は好物。まして憎むべき検察(個人的偏見)。起訴=有罪いわゆる99.9%。刑事事件に置ける裁判所、検察、弁護士の三角関係。憎むべきは犯罪であるが冤罪の温床は無いだろうか?タイトルは『ナリ検』だが著者はヤメ検。経験者ならではのは切り口。キムタク『HERO』を取り入れてるのも面白い。検察、弁護士、裁判所そして警察の有るべき姿を見たように思いました。検察の苦悩も分からないではない。ただ現実問題、官側の検察、裁判所はベッタリ関係であると言うのは素人でも感じる。真実と正義の狭間。読後感良し2021/08/03
ねお
12
検察官による無罪判決への控訴、再審請求への即時抗告、独任官庁であるのに存在する決裁制度や控訴審議での多数決、検察や警察による証拠隠し、「冤罪」に対する嫌悪、調べで被疑者を割ることへの執着、弁護士や被疑者・被告人への蔑視等、検察内部にいた筆者であるからこそ指摘できる検察官同士の描写には、幾多もの刑事司法制度の危うさが映る。「罪を憎んで人を憎まず」は、法曹三者の共通原理であるはずなのに、ややもすると、検察官は弁護人を憎み、弁護人は検察官を憎む。しかし、人は間違う。その過ちの方向を修正する道を探す物語である。2020/09/28
toshi
8
未知の世界の話だから現実とフィクションがどう入り組んでいる物語なのか分からないけれど、現状の検察と言う組織がこの通りだったら怖いな。間違えを認めたくないと言うのは分かるけれどだから認めないというのはエンジニアの私としてはものすごく違和感、と言うか下の立場の人が可哀相。政治家も間違えを認めないけど。認めなくても有耶無耶にできてしまえる人はそういうものなのかな。。元検事の著者が書きたかったのはまさにそこだと思うけど。ただ主人公をはじめ、検察の人達が上司や部下に対して自分のことを俺とか僕とか言うのは不自然。2024/08/29
おやぶたんぐ
5
エンタメ作品として見た場合に出来が良いとはいえないが、刑事裁判の実態を描いている点で一読の価値がある。筆者による自身のドキュメント「検事失格」と併せ読むと一層興味深い。2021/01/02