内容説明
『源氏物語』五十四帖には往時の風景が登場する。そのほとんどは平安京とその周辺で(山城国)、少し離れて近江・若狭・越前・大和・摂津・播磨国、もっとも遠方が太宰府であろうか。概して、この時代の人々に旅の風習がないこともあって行動範囲は極めて狭く、とりわけ女子はそうであった。その意味では、受領を父か夫に持つ王朝の女流作家で地方生活の体験者が多いことは注目されてよい。そのことが彼女たちの作品を豊かにしているし、紫式部も父の任国、越前での一年余の生活が、地方描写の糧になっていることは疑えない。さあ、王朝の雰囲気を求めて旅に出よう。本書が、その案内人となれば幸いである。
目次
第1部 桐壺~明石(桐壺;帚木 ほか)
第2部 澪標~藤裏葉(澪標;蓬生 ほか)
第3部 若菜上~幻(若菜上;若菜下 ほか)
第4部 匂宮~夢浮橋(匂宮;紅梅 ほか)