内容説明
豊富なデータや実証分析を紹介し、そこから見えてくる現役世代の「思い」「苦境」を浮き彫りにする。家族と雇用、同時再生の道しるべを示す、提言の書。
目次
第1章 家族の生活を脅かす雇用の不安定化
第2章 「働くこと」の内側で広がる問題
第3章 雇用悪化によって揺らぐ家族の生活基盤
第4章 家族を持つ、子どもを育てることが難しい
第5章 脆弱な現役世代への社会保障
第6章 現役世代のリスク拡大
第7章 雇用と生活の不安定化は誰にとっての問題か
第8章 現役世代の雇用と生活を守る欧州の取り組み
第9章 現役世代の社会保障を機能強化せよ
著者等紹介
大嶋寧子[オオシマヤスコ]
みずほ総合研究所政策調査部主任研究員。1998年東京大学大学院修士課程修了後、富士総合研究所に入社。経済調査部(消費・雇用)、外務省経済局への出向(経済協力開発機構に関わる政策調整等)を経て、2005年より現職。主に雇用労働政策、家族政策を担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Miyoshi Hirotaka
12
東日本大震災がアッパーカットなら、雇用不安はボディブロー。人々の命や生活基盤が脅かされる事態がゆっくりと広がってきた。予測可能であったが、対策は先送りされ続けた。国土が狭く、資源もなく、食料やエネルギーを輸入に頼るわが国の競争優位を支えるのは人材。ところが、若者、女性が十分活用できていない。卓越したイノベーションで生産年齢人口が減少するダメージはある程度食い止められる。しかし、家族を再生産させる力と意欲を失っては、長期的には国は衰退し、滅びる。負担増と負担の公平性。嫌な議論だが、避けられなくなった。2013/12/27
midnightbluesky
7
今の問題と政策提言が主なので、とにかく急いで解決しなくては、という人向けではない。私は学者や政治家ではないので、分かりきっている問題ならなんとかしてくれよ、という感じにしかならなかった。問題提起の本を読むと、毎回同じ気持ちにしかならないので、もうこの手の本を読むのはやめようか、と思う。2012/10/22
壱萬参仟縁
5
著者はいわゆるエリートの研究員だから、本当に困窮している非正規雇用者の立場は共感できないだろう。理由は、消費税増税では、福岡正行の『財務省解体論』には1%引き上げで2.1兆円としているが、本著では相変わらずの2.5兆円となっている(362ページ)。ここで書かれていることと、副題の「働けない転落社会を克服せよ」という、命令形に違和感を感じる。負け犬の遠吠えであるが、転落社会を克服する政策提言は、創業支援が税制優遇なく、残念。2012/10/03
かっちょ
3
最新のデータ(2011年現在)で論じてくれているので、リアルな状況をつかめる。不本意型の正社員や再び働きたい女性が増加していることの一因として、雇用による“保障”がゆらいでいるという点があげられている。雇用による保障のかわりに、社会による“保障”が提案され、個人的にそれは賛成だが、ここ最近の社会保障改革関連に対する人々(マスコミによる!)の対応をみていると、それも依然として難しい改革なのではないかと感じる。進退ここに窮まれりか。2012/01/09
まゆまゆ
2
現在日本が抱える社会システムの問題点をデータを用いながら丁寧に解きほぐしていく。特に雇用について、90年代から現在までの変遷がよくわかる。政策提言は現役世代の社会保障強化、と特に真新しさがなく、他の本でも提言されていることだが、逆にそれだけ必要性が増してきたいうことだろうか。2012/01/31