内容説明
念願の溶鉱炉を手にした西山弥太郎は、千葉製鉄所を完成させるため、世界銀行と融資の交渉を開始し、息つく間もなく岡山県水島工業地帯で新たな大製鉄所建設に乗り出す。人に優しく、自分に厳しく、工員たちから「おやじ」と慕われた西山は、絶妙の人使いで3万人近い従業員を束ね、病魔に斃れる最期の瞬間まで、最高の鉄づくりに執念を燃やした。―“鉄のパイオニア”の生涯、堂々の完結!
目次
第6章 高炉の病気
第7章 世銀借款
第8章 涙の第一ホット
第9章 夢の水島
第10章 哀愁尽きることなく
著者等紹介
黒木亮[クロキリョウ]
1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学大学院(中東研究科)修士。都市銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務し、国際協調融資、プロジェクト・ファイナンス、航空機ファイナンス、貿易金融などを手がける。2000年、『トップ・レフト』でデビュー。英国在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
88
黒木さんによる金融業界以外のノンフィクションノベルです。当初週刊エコノミストに連載で読んでいたのですが毎回2ページであまり印象に残りませんでした。文庫本となっていたのを知って再度読んだのですが日本の製造業の原点を見るようでした。川崎製鉄(現JFEスティール)の中興の祖の西山弥太郎の生涯を中心に千葉製鉄所の設立と水島製鉄所を設立するまでをじっくりと描いています。2022/04/13
アメフトファン
38
JFE水島製鉄所を作る時の苦労話など色々と面白かったですが、どうしても会社の社史を読んでいるようなぎこちなさがあり、主人公の深さを感じる事が出来なかったのが少し残念でした。ただ素晴らしい人物であった事は間違いありません。2015/02/07
幹事検定1級
33
川崎製鉄を築きあげた西山氏の足跡をたどる下巻。最後の最後まで日本の製鉄業を考え、世界の動向を見極めていました。単なる伝記というだけでなく、日本の戦前戦後の製鉄業と日本社会を学ぶ意味でも素晴らしい作品です。これを書き上げるには何十冊という書物から学ばなければ書くことができないと思いますし、作者の黒木さんの作品への思いと努力を感じさせていただきました。2016/08/12
hiromi go!
23
川崎製鉄(現JFE)の千葉製鉄所を建設し、次の水島製鉄所建設前に、夢半ばで斃れた西山弥太郎の物語(水島製鉄所は後任の手で後年稼働に至る)。狂ってないと、歴史を変える大事は成せないと言いますが、狂い様が半端無いです。何故そこまでの信念を持ち続けられたのか。もちろん理屈では無いのでしょうが。良い本に巡り会えました。感動しました。2015/01/03
まつうら
20
(上巻の続き)物語のクライマックスは、やっぱり千葉製鉄所建設計画だと思う。5億の会社が163億を投資して製鉄所を作るなんて、普通に考えれば正気の沙汰じゃない。案の定、メインバンクは二の足を踏むし、日銀の一万田法王は 「建設を強行するなら、敷地にぺんぺん草が生えるぞ」とまで言い放った。 でも西山は、鉄づくりが日本の将来だと信じて疑わないし、部下も西山の夢に強く共鳴していた。中山素平の眼鏡にかなったのは、先進的な建設計画よりも、こんな親分と子分たちの姿だったのかもしれない。