出版社内容情報
千百年前から伊勢物語は読み継がれ、ふるくから在原業平はプレイボーイの代名詞だった。業平の「色好み」とはいったいどういうものなのか――多くの読者を獲得している『小説伊勢物語 業平』の著者が自ら小説に紡ぐうちに浮かび上がってきた「雅」という人間力に迫る!
「英雄、色を好む」ということわざがある。現在ではセクシャルハラスメントになりかねないが、長らく続いた男尊女卑の社会では、それをよしとしてきたことを表すフレーズとも言える。英雄ではないにしても在原業平もしばしばこの文脈でプレイボーイの代名詞として人々の口の端にのぼってきた。しかし、業平の「色好み」は単に女性との性愛に執着することとは違うのではないか――見えてきたのは、現代にも通じる豊かな人間関係を構築できる能力だった。そして「雅」とはその能力に裏打ちされた人間的な余裕だとも。社会が多様性を認めることを人々に求める現代人にこそ、その優れたコミュニケーション力を、業平から学ぶところは大きい。
伊勢物語は恋愛の教科書ともしばしば言われる。つまるところ、男はいい女に育てられ、成長した男がいい女を育てる、それも思いを歌に詠むことによって。それゆえに言葉のコミュニケーション力の高さが求められる。その能力は恋愛以外の人生も豊かにするものになるだろう。
内容説明
女が信じ、男が頼る人間力とは。平安の歌人・在原業平の一代記を日本で初めて小説化した作家が、政から遠ざかり「みやび」に生きた高貴な血筋の男の人間力を、数々の女性との恋や、男たちとの垣根を越えた交誼から解き明かしていく。
目次
第1章 高貴なるものの責務―ノブレス・オブリージュ(春日野の姉妹;西の京の女―業平にとって決定的な人)
第2章 女性からの気づき(五条の方―知的な小悪魔から学んだこと;蛍の方―巻き込まれたから見えるもの ほか)
第3章 禁じられた恋、そして和歌を広める同志へ(藤原高子―禁じられた恋、深い愛情;恬子内親王―耐え、貫く、強い女性が見つけた自分流)
第4章 男たちとの関係―人間的にも認められ、信頼される(源融―歌にも生き方にも尊敬;惟喬親王―雅を具現化する人、業平が生涯仕えたかった人 ほか)
第5章 巻き込まれた結果(九十九髪の女―流されて情を交わしてみると、いい女だった;伊勢(杉)の方―業平の歌人としての功績を委ねる)
著者等紹介
〓樹のぶ子[タカギノブコ]
作家。1946年山口県生まれ。80年「その細き道」で作家デビュー。84年「光抱く友よ」で芥川賞、94年『蔦燃』で島清恋愛文学賞、95年『水脈』で女流文学賞、99年『透光の樹』で谷崎潤一郎賞、2006年『HOKKAI』で芸術選奨文部科学大臣賞、2010年「トモスイ」で川端康成文学賞。芥川賞をはじめ多くの文学賞の選考にたずさわる。2017年、日本芸術院会員。2018年、文化功労者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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