内容説明
新日鉄住金がポスコによる技術窃盗の証拠をつかんだのは韓国人密告者の「怪文書」がきっかけだった―90年代半ばから韓国・中国企業に日本の先端技術が流出し続けている。彼らはどのような手口を使うのか。産業スパイへの対抗策はないのか。日経の編集委員が深淵に迫る!
目次
第1章 新日鉄で何が起きたのか―秘密漏洩裁判の実態(暴かれたスパイ行為;密告者との接触 ほか)
第2章 産業スパイ天国・日本(日本の限界を示したデンソー事件;容疑者が証拠のパソコンを破壊 ほか)
第3章 スパイをつくるのは誰だ(実態を数字で確かめる;日本の「頭脳」が流出 ほか)
第4章 動き出した包囲網(秘密防衛、官民が初めてタッグ;従来の法改正、産業スパイ防止に効果は薄く ほか)
第5章 会社を産業スパイから守るために(秘密漏洩防止、まず何をするのか;情報は「秘密」と「それ以外」に分けて管理を ほか)
著者等紹介
渋谷高弘[シブヤタカヒロ]
日本経済新聞東京本社編集委員。1990年入社。産業部、法務報道部などを経て現職。主に知財・法務関連を担当。2002~05年青色発光ダイオード(LED)の発明対価を巡る特許訴訟を追跡取材した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
5 よういち
100
日本は技術立国だと言った人がいたが、その技術立国が技術だけに目がいきすぎこうした情報漏洩というものを疎かにしてきた結果生じた数々の秘密漏洩事件。◆ウチの会社も最近は他社だけに限らず社員とも秘密保持契約を結び、厳しく情報漏洩を監視している。日本企業は、今までがあまりにも世間(世界)を知らない町(日本)の職人でしかなかったのだと実感できる。気がついたときには盗まれたどころか相手がガードしてしまってるケースもある。技術漏洩が発生する背景には、企業と従業員の関係性がもたらす「心の隙間」が潜んでいるのだろう。2019/11/24
rakim
7
新聞記者さんの取材力による現実の企業スパイの現在。「失われた20年」の日本の損失は確かに大きくて、企業や国家の甘さ・お粗末さが目につきますが、これからの意識変化、対策のあり方に言及しているのが好感触です。私のような普通の主婦にも読みやすくて平易な文章です。小説好きとしては、企業小説(例えば、人気の池井戸さんの一連)が数冊書けてしまいそうな感覚にもなりました。企業人となる若い人、個人の常識として意識を高めたい人向けの分かりやすい教科書の様にも思えました。この類いの本としてはお勧め。2015/12/11
きみたけ
6
新日鉄住金による韓国の鉄鋼大手ポスコへの訴訟の話を中心に産業スパイの内情を綴った一冊。2015年改正不正競争防止法で歯止めがかかる以前、産業スパイに対して日本の企業がいかに無防備で、日本の法律がいかに無力だったのかが分かりました。新幹線技術に関する中国の特許出願、海外からのサイバー攻撃、米国特許出願数で台湾・中国・韓国へ移籍した日本人が活躍していた話など、割りと衝撃的な内容に驚きました。 先日我が社でも不正防止に関する研修を行いましたが、「不正のトライアングル」に自身が陥らないように改めて思いました。2020/12/10
くらーく
2
事実の積み上げなのだろう。ひどい話。でも、読者ターゲットはどこだろう。本当は経営者なのだろうけど、日本の経営者はまず手に取らないだろうな。2016/03/12
ゆー
1
日本の最先端技術の漏洩。 その時、そこでなにがあったのか。 新日鉄住金がポスコによる技術窃盗の証拠を掴んだ経緯や、流れが記載されています。産業スパイ天国・日本といわれるこの国の最先端技術がどのように盗まれているのか事例から学ぶことができるでしょう。 日本の産業史をなぞりながら、また今後の日本産業がどのような脅威に晒されているのか専門用語は多いですが読んでおきたい一冊です。2016/01/31