内容説明
二つの大戦の教訓を、ユーロによる欧州統合の夢に生かそうとした独仏。しかし発足時から抱えていた根本的矛盾が今、ユーロに噴き出している。ギリシャから始まった危機はドルと円を揺さぶり、日本を「失われた20年」の困窮に陥れている。そこからの脱出策を多くの実証データで提言する。
目次
第1章 深刻化するギリシャ債務危機
第2章 ユーロ圏の金融危機と政府債務危機の悪循環
第3章 ユーロは崩壊するか
第4章 ドルの信認は崩れたか
第5章 日銀が生み出しているデフレと超円高
第6章 デフレ・超円高から脱却する鍵は日銀法改正にあり
著者等紹介
岩田規久男[イワタキクオ]
学習院大学経済学部教授。1942年生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学院修了。上智大学経済学部教授を経て、98年より現職。著書に『昭和恐慌の研究』(編著、第47回日経・経済図書文化賞受賞)ほか多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
18
ギリシャに端を発するユーロ危機、リーマン・ショックとの関連性、米ドルの信認能力、日本のデフレ対策についてコンパクトにまとめている。目新しく思えたのは「最適通貨圏」の概念。北海道円、沖縄円というふうに本州と通貨そのものを切り離してしまうのはどうか、という例は少々乱暴かと感じたが、EU加盟国に関しての記述は頷ける部分が多かった。2012/03/22
takizawa
4
最近の経済事情を知るのに役立つ本。ユーロ債務危機や超円高がなぜ起こったのか,その原因と対処法を論じている。ドルの信用は失われたのか?という論点にも一章が割かれているのが目新しい。リーマン・ショック以降特に経済・金融関連の類書は多いのだけれど,本書は実証データから論理的に導かれることを丁寧に議論する点に特徴があるといえる。最終的にはいつも通り「インフレ・ターゲット政策を採用せよ」で落ち着くのだが,国会議員の反応を肯定的に捉えており変化の兆しが。2012/02/12
bittersweet symphony
1
2011年12月発売。金融システムの絡み合いを数理・統計的に解析して解説する著作スタイルで、個人的には現代経済を語る上で軸足が国際金融システムにあるということのアドバンテージを改めて如実に感じることが出来る内容でした。それはとりもなおさず、世界における日本の経済を語るにおいても日本からフィルターを通して見えるところだけの判断では何も見えてこないという当たり前の事実(でありながら、そう出来ていないにもかかわらずそれを自覚できていない人がなんと多いことか)の重さを感じることだといえます。2012/02/03
Row_the_Punks
1
タイトルは、ユーロ危機ですが、リーマンショック後の米国金融政策にも言及しています。岩田先生の本の中でもかなり読み易い。日銀副総裁となってデフレ不況を克服させて頂きたい。2013/03/14
Hideki Nakane
1
かなり懇切丁寧に解説してあって分かりやすい。そしておもしろった。 ユーロの矛盾である、金融政策は単一であるが、財政政策は各国バラバラということに対し、共同債などで対応しても、結局は独仏ばかりが負担することになるので困難と。若干身も蓋もないが、「最適通貨圏」との考え方から南欧は切り離して、独仏+ベネルクス3国の5カ国でユーロをやべきとの提案している。 さらに緊縮財政がユーロ危機を招いていると指摘。金融緩和してインフレ率を4%にと。この点に関しては、昨今の動きを見てると動き出しそうではある。 後半はドル2012/05/22