内容説明
バスや電車の中、駅や観光地、デパートから不用品回収車まで、日本中にいたるところで“おせっかい放送”が聞こえてくる。「戦う哲学者」が孤軍奮闘、静かな街を求めて「音漬け社会」に異議を申し立てた話題の書。
目次
1 言葉の氾濫と空転(「実効を期待しない」言葉のカラ回り;なぜ「車内で人を殺すことはご遠慮ください」と言わないのか? ほか)
2 機械音地獄(ロマンスカー「音漬け号」;自分ひとりのために戦う難しさ ほか)
3 轟音を浴びる人々の群れ(マイクをにぎり絶叫する人々との「対話」;「情」が移るとやりにくい ほか)
4 「優しさ」という名の暴力(吉野弘の「夕焼け」;「優しい」人とは他人に「優しさ」を期待する人である ほか)
5 「察する」美学から「語る」美学へ(「音漬け社会」解体に向けて;子どもに「語らせない」先生たち ほか)
著者等紹介
中島義道[ナカジマヨシミチ]
1946年福岡県生まれ。東京大学法学部、教養学部卒業。哲学博士(ウィーン大学)。現在、「哲学塾」主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
2
本人も言う通り、確かに最初はコミカルに自己戯画化したドン・キホーテの奮闘記、自分とは遠い世界の出来事として読んでしまうのだけど、再読に再読を重ねる度に、これはネタではなく真正正しい本だと思えてしまう。多分、公式騒音だけでなく、その向こうにある醜くやかましき日本性まで射程を広げ、義憤の潜在的ボルテージと密度が濃いからだろう。特に本書でも度々指摘される電車アナウンス、BGMの煩さといったら確かに事だと思う。ただでさえ電車や自動車の類いは喧しいのにそれを余計酷くしてどうしようというのだろうね2012/09/29
ともみぃ
1
おもしろかった。やっぱり日本はうるさかった。うるさい日本の話から、「語る」社会への話の持ってき方も、なかなかだった。今自分は、ちょうど、著者と似たような根深い問題と闘っているので、励まされたし、たとえ周りに煙たがられたり、つまらないことだと一蹴されても、語り続けていこうと思う2013/05/30
nobuoK
0
本の頭半分までは、音に対して多数派がいかに無頓着に音を扱っているかが書かれており、かなり共感しました。邪魔な音・意味のない音・うるさい音・環境を邪魔する音など様々な形で日本人が鈍化してきた音に対する不快さを表現している。後半では、その日本人が何故鈍化したのか?また、何故語ること・議論することを辞めたのかという日本人の奥底にある思想についても書いており私たちの根本にあることろにある考えかたについても考えさせられます。2014/09/03
マウンテンゴリラ
0
確かに公共交通機関や町中で聞かれる放送は、私にとってほとんど無駄なものであると感じるが、今まで、それを不快に感じることもほとんどなかったというのが、正直なところである。しかし、本書の内容は全般的に面白く、納得する面も多かった。それは、現代日本社会、日本人の特徴、性向を見事にあぶり出している点に特に感じられた。小さな親切、思い遣りを金科玉条の如く善とし、主体性に欠け、相互にもたれあう幼稚園国家を形成しているというのは、近頃の周辺諸国との外交問題に対する日本人の構えかたに如実に現れているような気がした。2013/07/08
FlowerLounge
0
日本人必読の書。街にあふれかえる機械アナウンスに怒り、立ち向かう話なのだが、これがなかなか根が深い。著者は二十年近く奮闘してるようだが、日本の音環境はいっこうに改善されないどころか、むしろますます悪化している。情けなくて読んでて泣けてきます。★52011/01/26
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