内容説明
居合いの剣で総統を魅了し、護衛に選ばれた日独混血の駐在武官補佐官。だが、祖国・日本は、そしてもう一つの祖国・ドイツは、彼の思いとは別の道を歩んでいた―。第2次大戦下のドイツを舞台に描くヒューマン・サスペンス巨編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
クリママ
44
625ページ、2段組みの小さい字。時間がかかった。ヒトラーに贈られた剣道の防具とともにあった手記。第二次大戦直前、ドイツ人を父に持つ混血の青年軍人が通訳としてベルリンに赴任する。第一次大戦の敗戦国となったドイツは、ヒトラーが登場したことによって、狂気の道をたどる。青年の見た当時の出来事が丹念に淡々と綴られる。「耳と目は持っていても、口と手を欠く一軍人に過ぎなかった」青年の虚しさが伝わってくる。結末は物語すぎる感もあるが、悲しみが長く尾を引き、現実に戻ってくるのに時間がかかる。素晴らしい作品だった。2017/06/22
みえ
36
読むのに時間かかったあ~。第二次大戦中のドイツ駐在の日本人から見たドイツの姿。手塚治虫のアドルフに告ぐを読んだ衝撃を思い出した。この時代にそれは違う!って言う勇気ってすごいよな。主人公とその兄の姿にジーンときた。2017/10/21
Cinejazz
20
1938年ヒトラ-政権下のドイツ。 日本大使館の駐在武官補佐官としてベルリンに出向した日独混血の陸軍中尉<香田光彦>が、日独友好の懸け橋にヒトラ-総統への寄贈品〝剣道防具〟にまつわる手記を通して、ポーランド侵攻に始まった第二次界大戦下のドイツと日本の無残な戦争の惨劇を語った慟哭の物語。ナチスのユダヤ人排斥、不治の病人に対する安楽死法令、非ドイツ的書物の焚書など、国家と戦争に翻弄される人々の数奇な人生が刻々と綴られていく痛恨の物語に、心身ともに打ちのめされてしまう。2022/12/22
はりーさん
4
日本人とドイツ人のハーフである香田少佐が、偶然にもヒトラーという時代の寵児に信頼を得、身近で総統とベルリンの栄枯盛衰を見届ける。戦争という狂気の渦により、美しいベルリン、優しい友人、愛すべき兄と妻ヒルデ、そしてこの世に生まれる事が出来なかった子供を失う。一瞬の希望と長く深い絶望が、歴史という潮流に合わせてよく描かれている。自然と読む手が止まらなくなる素晴らしい作品だ。2013/07/06
くまこ
4
まあまあ面白かった。剣道経験者で、第二次世界大戦史に興味があるので、最後まで読み通せた。著者のファンだが、外務省武官補佐官・陸軍軍人としての主人公の葛藤が描写不足で物足りなさも残った。著者は、主人公にナチスの本質を見抜かせ繰り返し批判させているが、戦後の常識的な視点で語っているだけで肉声として伝わってこなかった。精神科医である主人公の兄の方が質感があり、『安楽病棟』とリンクするくだりが印象に残った。2012/03/01
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- 和書
- 民族藝術 〈vol・1〉