内容説明
美しくない日本の私たち、近現代史に自画像が映る。明治から平成まで、社会を一色に染めた“熱風”のような狂騒、ブーム、抗えない空気…いつか来た道を辿り、集団での愚行を繰り返さないために、歴史を正視することは自虐ではない。
目次
明治篇（旧物破壊の嵐―明治維新、文化財に牙；欧化という熱病―人種改良、本気で議論 ほか）
大正篇（「新しい女」のたたかい―従属からの解放叫ぶ；「今日は帝劇、午後はカフェー」―都に咲いた大衆文化 ほか）
昭和篇（日中衝突への導火線―敵意・憎悪が世論主導；軍国女性「死の餞別」―戦地の男たちに重圧 ほか）
平成篇（湾岸危機、「想定外」の迷走―迫られた「カネも汗も」；バブルの焼け跡―狂乱・陶酔、突然の「敗戦」 ほか）
熱風、最大の演出者 近現代のメディア（「新聞は思想戦兵器なり」―営利追求、戦争熱あおる）
著者等紹介
井上亮［イノウエマコト］
１９６１年大阪生まれ。８６年日本経済新聞社に入社。東京、大阪の社会部で警視庁、大阪府警、法務省などを担当。現在、社会部編集委員（宮内庁担当）。元宮内庁長官の「富田メモ」報道で２００６年度新聞協会賞を受賞（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる坊
15
再読。明治以降何が日本で起こったのかということはよく聞いたりするけど、その時国民は何を感じどう行動したのかはあまり聞かない。本書ではそのことについてよく書かれている。関東大震災の時に日本人が中国人や朝鮮人にしたひどい仕打ちや、戦争時に冷静さを失い熱に浮かされていたことなどは忘れてはいけないことだと思う。日本が近代化をするために、経済成長するために犠牲にしたものや、恥ずべき負の側面も僕たちは目を背けてはいけない。また同じ過ちを繰り返さないために。2016/02/20
はる坊
12
明治から平成までの日本の暗部が記されていた。近代化するために、または、戦争をするために、日本人はかなり無茶をしていたことが分かった。新たに過去と同じような愚行を繰り返さないためにも、日本人はもっと歴史を学ばないといけないと思う。出来事を知るだけじゃなく、その背景まできちんと理解しないと、また同じ過ちを犯す可能性が高い。2015/02/07
cape
7
熱に浮かされた日本人史。時代に流され、メディアに翻弄され、風潮になびく日本人はどこか滑稽。賞揚されがちな明治維新や日露戦争、高度成長期の負の側面は印象的。昭和の記述は少なすぎるように感じる。日経新聞連載時にも目を通すことはあったが、こうしてまとめて読むとおもしろい。結局、歴史から学ぶより、歴史になってはじめて気がつくということだろうか。歴史から学ぶことができるとも感じるが、自分だけ学んで賢くなっても無意味なのかも。社会のあり方も考えたい一冊。なんて言いつつ、今も熱に浮かされた日本人であることはたしかだ。2015/06/02
勝浩1958
6
もっと刺激的なことが次々と出てくるのかと思ったのですが、それほどでもなく少し期待外れでした。そんななかでも気になったことがこれです。「明治天皇は北朝天皇の子孫である。南朝と正成を顕彰するほど、天皇と政権の正当性が揺らぐ。大逆事件は、この「爆弾」に火をつける危険性があった。」それはなぜか。それは秋水が公判で「今の天皇は南朝の天子を殺して三種の神器を奪いとった北朝の天子の子孫ではないか。それを殺すのが何故それほどの大罪か」と言い放ったからだ。2015/04/26
inokori
5
日本経済新聞での長期連載を単行本化したものとのこと．明治から平成はイラク人質事件での「自己責任論」の吹き上がりまでを扱っている．直近のエピソードで考えてみても，今般のイスラム国による邦人殺害や朝日新聞の慰安婦報道での過剰な反応のヴァリエーションが，150年弱の歴史の中で繰り返し現れてくることがよくわかる．当時の新聞・雑誌等の記事の引用も多くその過熱ぶりも想像しやすい．「リブ、女の解放宣言」の項が，バックラッシュの側の意見や罵倒が現在では考えられない内容で唖然としつつも個人的にはいちばん面白かった．2015/01/29
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