内容説明
なぜ原発事故が起き、賠償支援策は迷走するのか。電力会社の原発推進を決定づけたのは50年前のひとつの法律だった。その成立に秘められた知的な戦いをミステリータッチで解き明かす。
目次
第1章 原発のトータル・コスト(二つのミステリー;原発で採算がとれるのか;原発建設費の謎;資本コストの謎)
第2章 国策としての原発推進(通産省の「産業政策」;日米「共同」の産業政策;先進国システムへの転換失敗)
第3章 民営か国営か(松永安左エ門の先見性;国家管理の影;松永の栄光と悲哀)
第4章 民法の神様と原賠法の謎(50年前の法律の呪い;電力会社の政府保護を明示;民法の神様の戦い)
第5章 原賠法に埋め込まれたメッセージ(我妻答申の意図;「愚鈍」な大蔵大臣;我妻答申の「改ざん」;最後の勝者)
著者等紹介
竹森俊平[タケモリシュンペイ]
慶應義塾大学経済学部教授。1956年、東京生まれ。81年、慶応義塾大学経済学部卒業、86年、同大学院経済学研究科修了。同大学経済学部助手、89年、米国ロチェスター大学経済学博士。主な著書に、『経済論戦は甦る』(第4回読売・吉野作造賞、日経ビジネス人文庫)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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ophiuchi
5
2011年10月に出版された本。戦後日本の電力•原子力政策、特に原子力損害賠償法の成り立ちについて書かれていて、3.12が人災である理由も明示されている。2014/03/23
HiroshiKzk
2
我妻栄先生が日本の現状をどう思っているか聞いてみたいですね。P160、政府が原子力の平和利用の利益を促進する必要を認め、決意する場合には、被害者の一人をも泣き寝入りさせない。という前提をとるべきてある。2013/08/25
koji
1
竹森先生は、「中央銀行は闘う」、「日本経済復活まで」に続いて3冊目。信頼する経済学者だけに、安心して読めました。我妻栄先生の洞察力と水田三喜男元大蔵大臣の信念の強さが存分に描かれていて、原子力政策の行方(この主題はあまりにも重く、本書は一つの解に繋がりますが、もっと多面的に見なければと思います。)以上に、その生き方、考え方が、日常の仕事に大変役立ちました。2012/04/30
yagian
1
専門家ではないが一流の経済学者(竹森先生)が、常識と公開資料で原子力政策について検討した本。仮説や推測が含まれているので論文という体裁ではないが、「常識」に基づいているので門外漢の私には非常に腑に落ちる内容。根拠とした文献はきちんと示されているので、専門家の人からの反論があればぜひ知りたい。2012/04/14
しまちゃん
1
50年前に成立した「原子力損害賠償法」の解釈が現在の原子力発電事業の問題点を提起しているように感じました。50年前の時点で原発のトータル・コストについて「安くない」ということが認識されていたことに驚きました。なぜ、原発のコストは安いという常識という名の非常識が今まで広まっていたのか?不思議です。民法の神様といわれる我妻先生が原発についても明確な問題提起をされていたことも初めて知り、より尊敬の念が増しました。電力事業を民営にするか国営にするかの議論も知ることができ、電力問題について改めて考えさせられました。2012/04/07
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