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内容説明
手塚治虫『火の鳥』初代担当編集者となり、我が国で唯一、固定種タネのみを扱う種苗店三代目主人が、世界の農業を席巻するF1(一代雑種)技術が抱えるリスクを指摘、自家採種をし、伝統野菜を守り育てる大切さを訴える。
目次
第1章 タネ屋三代目、手塚慢画担当に(タネ屋に生まれて;手塚漫画との出合い ほか)
第2章 すべてはミトコンドリアの釆配(生命が続いていくということ;タラコは吉永小百合の卵子何年分? ほか)
第3章 消えゆく固定種 席巻するF1(最初の栽培作物はひょうたん?;優性と劣性 ほか)
第4章 F1はこうして作られる(「除雄」を初めて行ったのは日本人;自家不和合性を使ったアブラナ科野菜のF1 ほか)
第5章 ミツバチはなぜ消えたのか(二〇〇七年に起こったミツバチの消滅現象;F1のタネ採りに使われているミツバチ ほか)
著者等紹介
野口勲[ノグチイサオ]
野口種苗研究所代表。1944年東京・青梅市生まれ。親子3代にわたり在来種・固定種、全国各地の伝統野菜のタネを扱う種苗店を埼玉・飯能市で経営。店を継ぐ以前は手塚治虫氏の担当編集者をしていたという異色の経歴を持つ。2008年「農業・農村や環境に有意義な活動を行ない、成果を上げている個人や団体」に与えられる山崎記念農業賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Aya Murakami
103
自然栽培でおすすめされている本なので他館から取り寄せてよみました。 ミトコンドリア異常の雄性不稔(花粉ができない株)をつかったF1種…。F1というと高校生物の時にエンドウの遺伝の法則問題にでてくるワードなので「実質無害な牧歌的なものでしょ」と軽く考えていましたが、ミツバチの大量失踪の話を絡められて不安になっていた。さらに種ができないターミネーターテクノロジー…。あまり生命をいじくりまわすのは得策ではないという話。2022/05/12
zero1
69
野菜は安全か?F1と呼ばれる一代限りの種を使った農業に警鐘を鳴らす。実家が種苗屋を営んでいた著者は手塚プロに入り、代表作「火の鳥」の編集者に。その後30歳で家業を継ぐ。固定種と交配種は何が違う?ミツバチの激減は何を意味する?農作物に放射線を用いること、遺伝子組み換え作物などにも言及。読めば分かるが、今の農業はかなり無茶なことをしている。種を独占する企業の野望など「沈黙の春」(カーソン)のテーマは残念なことに現代も生きている。農業は何が自然か?自殺遺伝子と人間の精子が減少している点など検証が必要だ。2019/10/05
あじ
62
現在市場に流れている種のほとんどがF1種で、生育が早く姿形が均一で出荷向きなのだそうだ(一世代限りの命)。一方固定種は出来栄えに個性(差)があるが、味が凄ぶる良いらしい(世代を繋ぐ種)。スーパーに並ぶ小松菜はチンゲン菜やタアサイの掛けあわせ。本来の味とはかけ離れているとか。家庭菜園でF1種の野菜を収穫したとしても、それは別物だと知りショックを受けた。著者はミツバチの大量死を、F1種に結びつけ仮説を展開していて興味深い。スーパーの野菜を口にしている私たちに、影響はないのだろうか?考えさせられる1冊でした。2016/02/14
@nk
46
タネは凄まじい生命力を持ち、なんとも健気な存在なんだろう。そんなタネを操るまでに至った人間の知恵は、もはや後戻りできないところまで踏み込んでしまっている。飢餓を救い、増え続ける人口を賄うには画期的だった数々の発見は、同時に自然の摂理を狂わしながら、工業化された農業を生み出した。科学技術の発展による功罪として、この「タネ」に関しても大きく注目されるべきであり、多様性を唱える場面でも、固定種からの収穫物などは、同様ではなかろうか。ただし、交配や雄性不稔の抽出ましてや遺伝子操作となれば、植物とは言えど、⇒2022/02/12
佐治駿河
43
序盤は手塚治虫先生と作品の「火の鳥」の話が中心でしたね。正直あまり本編に必要ない感じはしましたが、著者の中の人生観や哲学では中心となる考えであり、著者の背骨(幹)となる事柄なので書籍の中に書かずにはいられなかったのでしょうね。この本を手に取った読者は当然ながら中盤以降の種(タネ)やF1種のことを知りたくて読んでいるはずです。F1種はタネできない場合が多いですが栽培しやすく商品作物としては優秀です。ですが固有種その逆なので近年は殆ど栽培されなくなってきています。今後F1種のタネの供給が途切れたら怖いですね。2025/04/22