内容説明
イラク・アフガン戦争の歴史的意味、地政学でみる中国・ロシア、大陸視点からの後醍醐天皇論―。ユーラシアをひとつのかたまりとしてみれば、あらたな地平が浮かび上がる。壮大なる日本発世界史への試み。
目次
序 なぜ今ユーラシアか
第1章 歴史から現在を眺める
第2章 ふたたび帝国の夢を求めるロシア―二〇〇八年、ロシア・グルジア戦争の記憶から
第3章 世界史はこれから創られる―日本発の歴史像への道
第4章 後醍醐天皇の謎―日本史と世界史の交点
第5章 歴史と古典―上山春平氏とともに
第6章 アンタレスの彼方―碑刻収集、日中友好、そしてすべては足利のために
著者等紹介
杉山正明[スギヤママサアキ]
1952年静岡県生まれ。京都大学文学部卒業、同大学院文学研究科博士課程単位取得退学。現在、京都大学大学院文学研究科教授。博士(文学)。1995年、『クビライの挑戦』(朝日新聞社)でサントリー学芸賞。モンゴル時代史研究の功績により、2003年に司馬遼太郎賞、2006年に紫綬褒章。『モンゴル帝国と大元ウルス』(京都大学学術出版会)で2007年に日本学士院賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kuppy
5
モンゴル帝国は広大なユーラシアを横断することから西はマルコポーロに代表されるイタリア都市国家の商人からロシア、中国、フビライの侵攻は免れたものの様々な影響を受ける日本まで時間の同時性から論じる。後醍醐天皇が目指したスターリン的な独裁国家は五重塔の相輪のように天によって選ばれた存在、天皇が中心となって国家を運営するという、大陸の思想が反映されたものとみなされる。その後の清王朝になってもモンゴルの血(妃)が半分入りその影響が無視できなかったことがわかる。筆者は欧米中心の世界史観に対して一石を投じる。2025/01/18
ふら〜
4
直接この本とは関係ないが、高校時代杉山氏の『遊牧民からみた世界史』を読み衝撃を受けたことを思い出す。「世界史にはこう言う見方があるんだ!」、「私もいまだ謎に包まれている部分も多い遊牧民(イラン系やらトルコ系やらモンゴル系やら)の歴史を研究してみたい!」と本気で当時思い、大学選びも色々迷った記憶(結局度胸なくモラトリアムが長くなるとこに行ったわけだけど)。色々語り始めると止まらないんだけど、この本の著者の杉山氏は世界史の見方を再提案しようという大きなスケールで物事を見ている。2014/12/20
ダージリン
3
モンゴル帝国に関してはほとんど知識はないが、想像以上に先進的で効率的な統治システムを持ち、その影響は広大なユーラシアに及び、歴史に重要な役割を演じていたことに驚く。従来の西洋史に過度に重きを置く見方は、著者が指摘する通り確かにバランスを欠いているのだろう。面白い本だったが、若干傲岸な書きっぷりは気になった。2025/02/10
Mitz
3
「人の営みの拡大形である歴史は、連関の中にある。その人の『守備範囲』が複数化し、多元化すれば、その人の歴史像はもとより、接触する各エリアの相互検証、相互理解も確実に進み、強固となる(185頁)」…印象的な言葉だ。著者が想定するレベルには遠く及ばなくとも、自分が歴史に接す中で意識していることだからだ。これまで苦手意識を持っていたが、友人の興味深いブログがきっかけで、最近ようやく世界史が面白くなってきた。興が乗ってくると、時空を超えた旅をしているかのような感覚になる。さて、次はどこへ行こうか…2012/09/08
笛吹岬
3
モンゴル史が世界史に与えた影響が不当に評価されていないことを気づかせてくれる。既発表論考を集めたものを中心としている(1つだけ未発表のものがあるが、脱稿から時間が経過している)。それも講演の記録も含まれていて、意外と「毒舌」ふうである。2011/02/20