ひととせの―東京の声と音

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  • サイズ B6判/ページ数 251p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784532164850
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0095

内容説明

老いが聴覚の聡さを蘇らせるのか、彼方から立ちのぼる四季折々の声と音。戦後の喧騒に塞がれた東京人の耳に、時空を往還し生の感覚を呼び覚ます。珠玉のエッセイ集。

目次

年は朧になり、季節ばかりが身に染みる。
年の瀬に、一日吹いていた風が宵の内に止んで、
正月の三ケ日ほどは、凧を揚げるには
子供たちが三、四人並んで行くと
大寒である。
今年は二月の一日が旧正月、
外国の小さな街の宿に泊まると、
私の年齢でも物心のつく頃にはラジオの音が
先日、夏目漱石の「虞美人草」の、映画を
三月の二日、明日は雛祭りになる。〔ほか〕

著者等紹介

古井由吉[フルイヨシキチ]
1937年、東京生まれ。東京大学文学部独文科修士課程修了。1971年、「杳子」により芥川賞、1980年、『栖』により日本文学大賞、1983年『槿』により谷崎潤一郎賞、1987年、「中山坂」により川端康成文学賞、1990年、『仮往生伝試文』により読売文学賞、1997年、『白髪の唄』により毎日芸術賞を受賞
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

踊る猫

27
読み終えたが、手応えがあるようなないような妙な印象を受ける。ここから読書をどう広げようか……短文を集めた古井由吉のエッセイ集の場合、端的に「筆の運び」が無軌道なのでなにか語ったか語っていないかのような曖昧なところに着地することとなる。その凄味が例えば小説や散文で現れることになるのだけれど、本書ではそうした「手遊び」の筆の運動(エクリチュール?)の楽しみが現れているとは言い難い。悪く言えばやっつけ仕事なのではないか、とも思われる。だが、ルーツとなる東京大空襲や団地住まいの話など無視し得ない事柄もまた興味深い2018/09/12

hitotoseno

2
視覚は目をつむれば遮断が叶う。されど耳を塞いでも音は必ずや這入ってくる。轟音がひびく戦時下の中で恐怖にさらされ、以来心理としての聾に陥っているのではないかといぶかる著者が、60年の時を経て大騒音行き交う東京の真ん中で、ふと聞こえて来る音に耳を澄ませては浮かんだ事どもを文字に映す。季節の音、社会の音、記憶の中の音、さまざまな音を拾いながら思考を巡らす姿を読み進めていると、おのずと読者の方でも耳を傾けていることがある。はたして何へ向かって済ましているものか、追体験か、あるいは著者への共感か。2011/11/23

tamioar

0
ゆっくりしている。2017/07/09

しじま

0
戦時中や戦後の話が沢山出てくる。当時子供だった人の体験談で、こういった日常の細々した事とか心情とか、そういう話はあんまり人から聞いたことなかったので、新鮮。2016/10/14

捨て犬

0
日本経済新聞に連載された歳時記。徒然なるままに、季節の音、温度、臭いを書き綴った小文集であり、古井先生の言葉に対する慈しみが、ページを繰るごとに紙面から芳醇に漂ってくる。先生の、人や思い出に向けられた眼差しのやさしさと相まって、読んでいるだけで心地よくなってくる、そんな一冊。2014/10/08

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