内容説明
人間のむき出しの欲望を突き詰めることで笑いが生まれ、戦後日本の姿も露わになる。土着的な映像と粘っこい演出で、「重喜劇」を確立した鬼才の自伝。
目次
第1章 早熟な都会のお坊ちゃん(芸術家の血筋;父と母 ほか)
第2章 鬼の今平(闇市の三船敏郎;最初の師―小津安二郎監督 ほか)
第3章 常民を撮る、神を撮る(南方へ―柳田民俗学に誘われて;汝ら何を好んでウジ虫ばかり書く ほか)
第4章 創造の曠野へ(日本初の映画学校;己れの生き方が最高の教育 ほか)
今村昌平・全作品リスト
親父の横顔―息子から見た今村昌平(天願大介)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
10
ヤミ市と赤線で青春期を過ごした今村は黒澤明の『酔いどれ天使』を観て、ヤミ市から間違ってスクリーンに飛び込んだような三船敏郎に衝撃を受け映画に目覚める。 下層といった場所や混沌といった状況は、今村にとってしごく普通の状態で、当然撮るべき映画にも反映していく。『豚と軍艦』のシナリオを書いているとき、小津安二郎に「汝ら何を好んでウジ虫ばかり書く?」と言われ、今村は「上等だ、俺は死ぬまでウジ虫を書いてやる」と心に決める。ウジ虫のようにもみくちゃにされ、地べたを這い、そこから見上げる世界が今村映画なのかもしれない。2009/07/26
yokmin
5
P60(酔いどれ天使)「三船敏郎・・演技はちっともうまくないが、 三船という人間そのものが発する強烈な存在感、荒々しい迫力に打たれた・・三船はけだもののようであった。異臭漂う闇市からそのまま飛び出してきたような、本物の魅力があった。三船を見て、映画にはこんなことができるのかと私は率直に感動した」 P118「映画会社で育つと、いつの間にか伝統的な手法が体に染み込んでしまう・・それに安住するのは嫌だった。いったん洗い直し、何とか違う方法を探ろうとしたのが『にっぽん昆虫記』であった」 共感を覚える。2013/09/23
takao
4
ふむ2024/02/22
カラシニコフ
0
人間を撮り続けた今村昌平の自伝。面白かった。松竹や日活の若手時代、自作の裏側、教育者としての側面も見られて、満足でした。パルム・ドールを受賞したとき、麻雀やっていたエピソードは、笑ってしまいました。2021/04/03
おじ
0
「神々の深き欲望」のメイキングをもっと詳しく知りたい。それだけで本が一冊書けそう・・・2020/10/14