出版社内容情報
ロシア軍兵士が体験した絶望の戦場。遺族も生還者も悪以上の後遺症をいまも病む。はじめて明かされた赤裸々な証言は、進行中の事態への予言ともいえる。
内容説明
本書には、七九年末のソ連軍のアフガニスタン侵攻後の十年間に、ソ連各地からアフガニスタンに送られた兵士たちの、息子や夫を失った女性たち、従軍していた女性たち(医療班、戦闘員、事務など)の告白が集められている。ベラルーシの女流作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチの第三作目のドキュメンタリー。
目次
歴史はウソをつく―この本のための覚書
アフガン帰還兵の証言
本ができたあとの日記から
エピローグの代わりにもう一つ
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
115
ソ連のアフガニスタンへの侵攻。私にとって悪者はソ連だった。しかし、兵士一人一人は、自分の身体を差し出さなければならなかった者達は、加害者でありながら被害者だ。第二次大戦のように、祖国を解放したわけではないから、国に戻っても熱狂的な迎えがあるわけではない。傷付いても満足な治療を受けられず、家族に頼って生きるしかない若者。しかし、国土は傷付いていないではないか、アフガンは国が傷つき子供もたくさん死んでしまったのに。それを兵士達の家族はどれだけわかっているのだろうかと、書かれたことを読んで思う。2015/10/19
どんぐり
96
「ソ連のベトナム戦争」といわれたアフガニスタン紛争 (1978年-1989年)に送られた兵士、息子や夫を亡くした女性、医療班などに従軍した女性など総勢47名からの聞き書き (1995年刊行)。兵士の多くは家から連れ出され武器を渡され殺すことを教え込まれた18歳から20歳の若者たち。両手両足をなくし自分が人間なのか動物なのかわからなくなったという少佐。正装の軍服を入れて重さが足りるように土が入れられた棺、テントのそばに山積みされた兵士の切断された手や脚の山を見ながら聖なる任務と教え込まれる看護師。→2021/11/24
おさむ
33
ソ連が侵略し、10年を越す泥沼の戦いとなったアフガン戦争。志願兵の多くは少年兵だった事実を改めて知りました。精神を蝕む戦場の狂気。亜鉛の棺で再会する遺族達の嘆き。読者の賛否両論の反応を読むと、旧ソ連でのこの戦争の検証の難しさを感じます。今年のノーベル文学賞受賞にふさわしい聞き書き文学の名作でした。2015/11/25
抹茶モナカ
25
10年に及んだソ連のアフガン侵攻の帰還兵と家族に取材したドキュメンタリー文学。証言はそれぞれは比較的短めで、断片的というか、散文なのだけど、悲惨な現実に読んでいて、気が滅入る。国の政治的誤りとして歴史認識されてしまって、そんな戦争で命を落とした若者の事は、ドキュメンタリー文学に記録されたとしても、浮かばれない。あまりに切ない本。2017/03/29
Nobuko Hashimoto
23
戦争や紛争や侵略は、人をここまで野蛮で残虐で下品な行為に走らせるような状況をつくるのかと衝撃を受け続ける一冊。こうした生の証言集を1冊でも読んだら、若者を戦地に送るなどあり得ないことだとわかると思うのだが。詳細はブログに記録。http://chekosan.exblog.jp/27823664/ アレクシェーヴィッチがノーベル文学賞を取って、ほかの作品は岩波が次々刊行してくれたが、この本は絶版のまま。復刊求ム。 2017/12/01