出版社内容情報
ま え が き
コンピュータは情報通信や統計処理のみならず,理工学問題の解決や研究に著しい貢献を果たしており,必要不可欠なツールとなっている.
このような状況の中で,理工学分野の現象を解析するための大規模なシミュレーションでは定式化したモデルを数値的に解くことが頻繁に行われている.この場合,数値解析のアルゴリズムと理論的背景を詳細に理解し,それに伴う誤差を可能な限り抑えて計算結果の信頼性を十分に高める必要がある.
本書では,高い精度の数値解を得るために必要なアルゴリズムと誤差を中心として数値解析の実際などを体系的に著した.すなわち,コンピュータ内での数値表現方法と誤差を知ったうえで,代数方程式や連立方程式の代表的な解法であるニュートン法や消去法や共役勾配法などの収束誤差の様子を具体的に示した.また固有値の計算ではベき乗法,ヤコビ法,ハウスホルダー法,QR法の数学的な背景を詳細に示した.さらに,積分と微分方程式の代表的なアルゴリズムと誤差の推定や軽減対策および解の安定性を示した.
これらの数値解法の理解を助けるために,解析解のある60余の例題について数値解と誤差を求め,誤差の推定や軽減対策などを数学的な裏付けと共に表や図でわかりやすく示した.これらの数値解法を総合的に学習すると,多種多様な100問の演習問題が解けるだけでなく,解析解を得ることが非常に困難な実務的な問題にも十分に対応できるようになる.
本書が高等教育機関のみならず,企業などでの社会人教育用として広く読まれ,理工学分野の問題解決に必要不可欠な数値解析のアルゴリズムの面白さと,誤差解析などの奥の深さを実体験する契機になれば大きな喜びです.
さらに,本書の執筆にあたって先輩諸氏の多くの著書などを参考にさせていただいた.これらの執筆の方々に感謝申し上げます.また,心温まる励ましを賜った友人と家族,さらに本書の発行にあたって大変お世話いただいた日刊工業新聞社の天野慶悟氏に厚く御礼申し上げます.
2001年11月 著 者
<<目次>>
まえがき
第1章 数値計算と誤差
1.1 整数型データの内部表現 1
1.1.1 整数型データの内部表現 1
1.1.2 整数型の計算誤差の例 4
1.2 浮動小数点型データの内部表現 6
1.2.1 浮動小数点型データの内部表現 7
1.2.2 浮動小数点型数値の精度 9
1.2.3 絶対誤差と相対誤差 11
1.3 数値計算誤差の種類と累積 12
1.3.1 打切り誤差 12
1.3.2 丸め誤差とその検出方法 13
1.3.3 計算誤差の伝搬と累積 14
1.4 誤差解析 16
1.4.1 誤差解析法 17
1.4.2 計算誤差と軽減対策 17
第1章 演習問題 22
第2章 代数方程式
2.1 2分法 23
2.1.1 2分法 24
2.1.2 2分法の収束判定 25
2.2 ニュートン法 27
2.2.1 ニュートン法 28
2.2.2 ニュートン法の収束 34
2.3 高次方程式 37
2.3.1 高次連立方程式への拡張 37
2.3.2 収束判定 38
第2章 演習問題 41
第3章 連立方程式
3.1 ガウスの消去法 43
3.1.1 前進消去と後退代入 43
3.1.2 枢軸と枢軸選び 46
3.1.3 逆行列への応用 49
3.2 消去法の計算回数と誤差 50
3.2.1 計算回数 51
3.2.2 消去法の計算誤差 52
3.2.3 消去法の計算例 54
3.3 反復解法 54
3.3.1 ヤコビの反復法 54
3.3.2 ガウス・ザイデルの反復法 60
3.3.3 加速緩和法 64
3.4 三角分解 65
3.4.1 LU分解 65
3.4.2 LU分解による連立1次方程式の解法 69
3.5 共役勾配法 72
3.5.1 共役勾配法 73
3.5.2 修正コレスキー分解と不完全コレスキー分解 77
3.5.3 前処理共役勾配法 81
第3章 演習問題 86
第4章 固有値問題
4.1 べき乗法 89
4.1.1 固有値と固有ベクトル 89
4.1.2 べき乗法 93
4.1.3 べき乗法の収束 93
4.2 ヤコビ法 97
4.2.1 ヤコビ法 97
4.2.2 ヤコビ法の収束 102
4.3 ハウスホルダー法 105
4.3.1 ハウスホルダー変換 105
4.3.2 三重対角行列の固有値 107
4.4 QR法 112
4.4.1 QR法 113
4.4.2 QR法の収束 120
第4章 演習問題 129
第5章 補間法と関数近似
5.1 ラグランジュの補間多項式 132
5.1.1 補間多項式 132
5.1.2 誤差の評価 134
5.2 スプライン関数による補間 138
5.2.1 3次のスプライン関数による補間法 138
5.2.2 誤差の評価 143
5.3 最小2乗法による近似 144
5.3.1 多項式近似 144
5.3.2 指数関数近似 148
第5章 演習問題 152
第6章 数値積分
6.1 台形公式による数値積分 154
6.1.1 台形公式 154
6.1.2 分割数と誤差 155
6.2 シンプソンの公式による数値積分 161
6.2.1 シンプソンの公式 161
6.2.2 解の収束と誤差 163
6.3 ロンバーグ法 171
6.3.1 台形公式の区間細分 171
6.3.2 解の収束と加速 172
6.3.3 ロンバーグ表 174
6.4 その他の数値積分法 177
6.4.1 ガウス型積分公式 178
第6章 演習問題 185
第7章 常微分方程式
7.1 オイラー法 188
7.1.1 オイラー法 188
7.1.2 近似解と誤差の評価 189
7.2 ルンゲ・クッタ法 191
7.2.1 4次のルンゲ・クッタ法 191
7.2.2 近似解と誤差の評価 195
7.3 数値解の比較 198
7.3.1 きざみ幅と精度の関係 198
7.3.2 誤差対策 199
7.4 数値解法の安定性 199
7.4.1 オイラー法の安定性 200
7.4.2 ルンゲ・クッタ法の安定性 202
7.4.3 中点公式の安定性 204
7.5 連立微分方程式の数値解法 207
7.5.1 高階微分方程式と連立微分方程式 207
7.5.2 2階微分方程式の数値解法 209
7.6 硬い微分方程式の数値解法 213
第7章 演習問題 214
演習問題解答 215
参考図書 219
索 引 221
内容説明
本書では、高い精度の数値解を得るために必要なアルゴリズムと誤差を中心として数値解析の実際などを体系的に著した。すなわち、コンピュータ内での数値表現方法と誤差を知ったうえで、代数方程式や連立方程式の代表的な解法であるニュートン法や消去法や共役勾配法などの収束誤差の様子を具体的に示した。また固有値の計算ではべき乗法、ヤコビ法、ハウスホルダー法、QR法の数学的な背景を詳細に示した。さらに、積分と微分方程式の代表的なアルゴリズムと誤差の推定や軽減対策および解の安定性を示した。
目次
第1章 数値計算と誤差
第2章 代数方程式
第3章 連立方程式
第4章 固有値問題
第5章 補間法と関数近似
第6章 数値積分
第7章 常微分方程式
著者等紹介
戸川隼人[トガワハヤト]
1958年早稲田大学理工学部卒業。1958年~1971年航空宇宙技術研究所。1971年~1976年京都産業大学。1976年~2000年日本大学理工学部。2000年~尚美学園大学芸術情報学部。理学博士
永坂秀子[ナガサカヒデコ]
1949年都立女子専門学校数学科卒業。1949年~1959年東京都立大学理学部。1959年~1992年日本大学理工学部。理学博士
佐藤次男[サトウツギオ]
1964年~1966年東北大学電気通信研究所。1967年国家公務員上級試験、電子通信職合格。1986年文部省内地研究員(東北大学)。1988年~1994年宮城工業高等専門学校電子計算機室長。現在、宮城工業高等専門学校助教授
中村理一郎[ナカムラリイチロウ]
1971年東京理科大学大学院理学研究科博士課程修了。1977年文部省在外研究員(アデレード大学、オーストラリア・ナショナル大学、パデュー大学)。1987年~1990年鶴岡工業高等専門学校電子計算機室長。現在、鶴岡工業高等専門学校教授(応用数学)
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