出版社内容情報
「近くにいるのが当たり前」となった成人先天性心疾患患者さんを支えるための第一歩
新生児の100人に1人は心臓に先天的な異常をもって生まれてくる.かつては救えなかったが,現在では長期生存が可能となった.すると,成人病の合併,拳児希望,就学就労の苦労,といった新たな問題が発生するようになった.
患者数はすでに50万人超ともいわれる.専門医に限らず,医療従事者であれば日常診療で遭遇するのが当たり前と考え,備えておかなければならない.
だが,先天性心疾患は多岐にわたり,手術法も時代によって異なるため,それを解説した既刊本は難解なものばかりで循環器内科医ですら敬遠するほどだった.そこで本書は,「これから始める」ためのステップを提供することを目指した.個別の疾患については解説を控えめとし,患者支援に紙面の多くを割いた.
序文
目次
成人先天性心疾患(ACHD)という言葉を耳にする機会が,着実に増えてきました.日本成人先天性心疾患学会の取り組みによって,全国の都道府県に診療の拠点が整備され,各地域で診療の中核となる施設が位置づけられるようになっています.一方で,患者さんの数はすでに50万人を超えており,診療の体制ができたとはいえ,現場の医療が十分に安定しているとはまだ言えません.専門医も250名を超えましたが,それでも必要な数には届いていません.小児科から循環器内科への「移行医療」が大切だとされていますが,実際にはその過程で医療から離れてしまう方も少なくありません.
現在では,小児科医や循環器内科医だけでなく,家庭医や一般内科医,看護師,さらには学校の養護教諭や企業の方々までが「成人先天性心疾患のある人に出会うのは特別なことではない」と考え,理解を深めていくことが求められています.診療の現場でも「このまま自分のところで診てよいのか,それとも専門施設に紹介すべきか」と迷うケースが増えてきています.
これまでの書籍では,「看護師の役割」「心理的な問題」「社会保障制度」といった項目はあるものの,数ページで簡単に触れられているだけでした.そこで本書は,成人先天性心疾患を専門とする医師以外の方々を主な読者に想定し,患者さんとの接し方を中心にまとめることを目指しました.各疾患の特徴や手術の概要,専門医へ紹介すべきタイミングなどを,経験豊富な専門家がわかりやすく解説しています.病気の詳しい病態の説明は必要最小限にとどめ,日常診療や生活の中ですぐに役立てていただける情報を充実させました.
成人先天性心疾患の診療は,循環器領域のみで完結するものではありません.産婦人科,消化器内科,麻酔科,歯科,看護職など,多くの職種が協力して成り立つ医療です.患者さんは比較的若く元気に生活していることが多いため,症状だけでは病状の進行を見極めにくいことがあります.また,病気によっては悪化する前に早めの治療が望まれる場合もあります.
本書を通して,家庭医や一般内科医,看護師をはじめとする幅広い医療従事者の皆様が,成人先天性心疾患の患者さんに安心して関わることができ,必要に応じて専門施設との連携を円滑に進めるための一助となれば幸いです.
2026年2月
心臓病センター榊原病院循環器内科顧問
赤木禎治
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- 電子書籍
- 田中家、転生する。【分冊版】 53 F…



