内容説明
ジョイス文学にひそむ言語芸術の真髄を短編集『ダブリンの人びと』に求めた、わが国で初めての精緻な作品研究。
目次
形式が内容を決定する―「対応」を中心にして
文体は変化する
リアリズム読みは面白い―「小さな雲」を中心にして
言葉づかいの諸相
『ダブリンの人びと』と音楽―音楽が人物を決定する
中継ぎ作品としての「二人の伊達男」と「小さな雲」
「死者たち」と“グッドナイト”
「アラビー」―語り手の問題を中心にして
「イーヴリン」
「レースのあとで」
「二人の伊達男」―作者の意図と読み手の評価
「下宿屋」
「土」
「痛ましい事故」とその卑俗でない文体
「委員会室の蔦の日」とその劇的手法
『ダブリンの人びと』の決定版
著者等紹介
米本義孝[ヨネモトヨシタカ]
大谷大学文学部教授
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感想・レビュー
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真塚なつき(マンガ以外)
1
ジョイスはプルーストとともに20世紀最大の作家と呼ばれる。華々しい長編作品の影でしかし初期短編集『ダブリナーズ』は小さく見られがち。本著は無個性で退屈とさえ思われかねない作品群に仕組まれたジョイスの透徹したリアリズムと当意即妙の技法をつぶさに拾い上げてゆく。象徴主義的な深読みに陥りがちな論文の多いなか、誠実に文章中に単語や文体にジョイスの技を求め見出だしてゆく姿勢に好感触。この徹底したリアリズムが『ユリシーズ』や『フィネガンス・ウェイク』等を単なる珍奇なだけの作品ではないと保証するのである。 2010/05/29
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