内容説明
本書では、本格ミステリのさまざまな作家やテーマに、贋作と評論の二方向から切り込んでみました。本書に収められた贋作は、すべて“評論的な贋作”、つまり、作家や作品に対する考察を小説の形で表現したものなので、切り込むことができたわけです。そして、カップリングされている評論は、その贋作を生み出す基となった論か、贋作を書くことによって深まったり生まれ変わったりした論をまとめたものです。それでは、贋作と評論を両輪にして、本格ミステリをめぐる冒険を楽しんでください。
目次
第1部 作家と作品をめぐる贋作と評論(島田荘司;綾辻行人;天城一;高木彬光;G・K・チェスタトン;ウィリアム・アイリッシュ;ジョン・ディクスン・カー)
第2部 作家と作品をめぐる贋作と評論(意外な犯人;多重解決;リドル・ストーリー;見立て殺人)
第3部 エラリー・クイーンをめぐる贋作と評論(『盤面の敵』;『帝王死す』;ラジオドラマ;『エジプト十字架の謎』と『Yの悲劇』)
著者等紹介
飯城勇三[イイキユウサン]
1959年宮城県生まれ。東京理科大学卒。エラリー・クイーン研究家にしてエラリー・クイーン・ファンクラブ会長。2011年『エラリー・クイーン論』(論創社)で第11回本格ミステリ大賞・評論部門を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハスゴン
34
とても面白い構成で、マニアックな内容ですが、年末年始にゆっくりと読みたいです2017/12/25
飛鳥栄司@がんサバイバー
22
総じて楽しみながら読んだ。自作の贋作をベースに各テーマを的確に論じていく手法は、なかなかに斬新である。 評論なので、多くの作品のネタバレがあるが、ネタバレしている作品を明記しているので、パスするか思い切って読んで楽しむのかは、読者の手に委ねられている。 高木彬光の章で論じてた、神津恭介についての考察は必読だと思う。これを読めただけでも、この本を買う価値があった(褒めすぎかな?)。2019/03/17
きつねねこ
5
ミステリの贋作と評論をそれぞれが相補うような形で併録した、ユニークで手間の掛かっている本。贋作はトリックの仕掛け以外にもミステリファンのツボにはまる小ネタ的くすぐりが楽しい。評論は、物凄く大雑把にしかミステリを読めない私としては目から鱗がぽろぽろ。ただ「面白い」だけでなく作者にはこんな周到な計算・狙いがあったのかと。黄金期の英米ミステリや初期の新本格作品を多く読んでいる人にはお勧めです。2018/02/20
田中峰和
4
本格ミステリとは何ぞや?馴染みのない人はその定義もあやふやだ。著者は名作の贋作と評論を並べて自分なりの意見を開陳してくれる。第一部第一章でいきなり新本格派のジャンルを切り開いた島田荘司を取り上げる。そして二章で彼が世に出した綾辻行人の「十角館の殺人」を紹介。作品中記号的キャラによって、論理的に推理させる綾辻。京大の推理小説研究会に籍を置いた彼らしい手法である。清張の「点と線」以降の社会派ミステリによって大量の一般読者を獲得し、旧来のファン層を遠ざけたが横溝作品映画化で本格派が脚光を浴びたとの説に納得。2021/03/13
紫
3
全十五章×2、三十編の贋作と評論からなる一風変わったミステリ評論本であります。贋作は数ページ程度の掌編から長いものでは三十~四十ページ程度。それぞれの作家のエッセンスを巧みに利かせながら、展開が早いこと早いこと、神津恭介モノの『甲冑殺人事件』はいかにも「らしい」仰々しい文章の連続に大笑い。収録作中のベストは英都大学ミス研による『女か虎か』解釈。ホントに有栖川有栖先生が書いたといわれても違和感がない内容に舌を巻きました。日常の謎にトンデモ推理を連発する『赤後家蜘蛛の会』も「らしい」お話で素晴らしい。星4つ。2018/01/11
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